台湾、裁判員制度導入か 国会で審議、模擬法廷を開催
台湾で、日本の裁判員裁判を模した制度導入に向けた議論が進んでいる。日本と同様に、裁判官3人と市民6人が協力するとした法案が、国会に当たる立法院で審議されている。日本で裁判員制度が始まり10年。台湾の関係者は「経験した市民の満足度は高く、司法への信頼が厚い」と、日本の取り組みを評価し、強い関心を寄せる。
4月下旬、台北市北部の士林地方法院(日本の地裁に相当)で、市民が参加する「国民参与刑事審判制度」の模擬法廷が開かれた。傍聴席より一段高い法壇の中心に3人の法官(裁判官)、その両隣に3人ずつの「国民法官」が並んだ。廷内スクリーンの「犯行映像」や、弁護士が大きな身ぶりで弁論する姿を、「国民法官」は真剣な表情で見入っていた。
台湾の刑事裁判は長く、職業裁判官のみで審理されてきた。市民参加への議論が本格化したのは、2010年ごろ。裁判官の汚職や、幼い子供への性犯罪の量刑が「軽すぎる」といった批判が起こり、浮世離れした裁判官をやゆする「恐竜法官」という言葉が生まれた。
アジアの近隣諸国では、08年に韓国、09年に日本で刑事裁判への市民参加が実現。司法院(日本の最高裁に相当)での勤務経験がある蔡彩貞・士林地方法院長は「社会の変化に追い付き、司法への信頼を取り戻すには、市民参加が不可欠と考えた」と語る。
司法院は各国の制度を比較。「プロと市民の共同作業という側面が強い」「審理に参加した人が高い満足度を示している」などと評価し、18年に日本型の草案をまとめ、立法院に送った。
法案では、おおむね日本と同じ規定を設け、有罪か無罪を決める際は、法官と「国民法官」の3分の2の賛成が必要とした。過半数でよいとする日本より厳しい要件で「市民の意見をより反映する」(立案に参加した裁判官)と工夫を凝らした。
審理が大きく変わることになり、戸惑いも広がる。銀行強盗を想定した士林地方法院の模擬裁判では、被告が起訴内容を認め、主な争点は量刑だったのに、「国民法官」が被害者の警備員を共犯と疑う意見を述べる場面もあった。
終了後、「国民法官」を務めたプログラマーの男性は「世間では司法制度への不信感が高まっているが、判決を下すには、考慮すべき要素がたくさんあると分かった。友人に制度を紹介したい」と満足した様子。
模擬法廷で審判長(裁判長)だった陳明偉法官は「人と違っても自分の意見を言ってもらえ、とてもよかった」と評価しつつ、従来とは違う審理を円滑に進めるため「専門の法官と検察官をつくった方がよい」と提言した。
台湾は来年、総統選挙を控える。複雑な政治情勢の下、法案の成立時期は見通せない。それでも司法院は、全土で模擬裁判を続ける。「刑事裁判への市民参加は必ず実現する」。蔡・士林地方法院長は力を込めた。(共同)
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