【高論卓説】イスタンブール市長選で政権派敗北 トルコ大統領の求心力低下懸念
トルコ最大都市イスタンブールの市長選の再投票が、6月23日に実施され、即日開票の結果、世俗派の最大野党・共和人民党(CHP)のエクレム・イマームオール候補者の得票率が約54%強と、与党・公正発展党(AKP)のビナリ・ユルドゥルム元首相・候補者の得票率45%強を9ポイントも上回り当選した。しかもイマームオール候補者の得票数がユルドゥルム元首相・候補者のそれを、イスタンブール39地区中のほぼ4分の3に当たる29地区でしのぐという圧倒的な形での勝利であった。
無効となった3月31日のイスタンブール市長選挙では、イマームオール候補者とユルドゥルム元首相・候補者の得票率の差は僅か0.2%強であったので、再投票で両者の差がいかに大きく開いたかが分かろう。
ユルドゥルム元首相・候補者は記者会見で、「イマームオール候補者を祝福し成功を希望する」と語り、敗北を認めた。エルドアン大統領もツイッターに、「速報集計で勝利したエクレム・イマームオール氏を祝福する」と投稿し敗北を受け入れた。
他方、イスタンブール市内で記者会見をしたイマームオール候補者は余裕を見せるかのように、(1)この結果は、イスタンブールとトルコにとって新たな始まりを示している(2)われわれはイスタンブールの新たな頁を開いた(3)新たな頁の上には正義と平等、愛がある(4)(エルドアン)大統領閣下、私は貴方と調和して働く用意がある-との勝利宣言を行った。
イスタンブール市長選挙での再度の敗北は、強権的なエルドアン政権にとって求心力の低下を招く可能性がありそうだ。今後の動きによっては、現時点では2024年に予定される大統領選挙が早まることも考えられる。またAKP内の亀裂を大きくし、ポスト・エルドアンの議論を高めることにもなりそうだ。
今回の選挙結果を受けて、トルコ問題の専門家たちも内閣改造や外交政策の方向の修正、そして上述したような大統領選挙の前倒し実施の可能性に言及している。
例えば、米・トルコ関係を専門とする政治学者のソネル・ガザヤガプタイ氏は次のような厳しい見方をしている(ガーディアン紙、6月23日付)。「AKPの再投票の決定は大きな戦略的誤りだった」「選挙運動も特徴を欠き混乱しており、AKPは守勢に立ちCHPを追いかける展開であった」「エルドアン大統領が巻き返しを図るには、政府を一掃の上、政策決定過程を見直すしかない。そうしなければ、今回の選挙を契機として支持低下に拍車がかかることになろう」と。
また、トルコの元外交官で現在はカーネギー欧州(ブリュッセル)で客員研究員を務めるシナン・ウルゲン氏はさらに厳しく以下のように見ていた(同)。「両候補者の得票率の格差から見て今回の結果は将来のトルコ政治にインパクトを及ぼすだろう」「AKPの既成の秩序にとっては警戒のサインである」と。
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【プロフィル】畑中美樹
はたなか・よしき 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。
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