【高論卓説】地域見守るAI監視カメラシステム “未来都市”待たず今すぐ導入を

 
※画像はイメージです(Getty Images)

 (1)スーパーシティ(2)スマートシティ(3)スマートコミュニティー-これらの用語の違いは何なのかご存じだろうか。ググってみると(1)の件数が最も多いが、1980年代の流行歌の歌詞にある「スーパーシティ」の影響もあるかもしれない。

 実はこれら3つの用語は、(1)が内閣府、(2)が国土交通省とその変形タイプで頭にICT(情報通信技術)がつくのが総務省、(3)が経済産業省という各省主導による未来都市構築プロジェクトに関するキーワードである。

 内閣府のスーパーシティ構想を実現するための国家戦略特区法案は閣議決定されたが、6月の通常国会で廃案となっている。未来都市には技術を活用した社会課題の解決が求められるが、都市の安全・安心の確保はいずれのプロジェクトでも重要な課題の一つである。

 地域社会の安全について考えさせられる事件が6月に2件発生した。大阪府吹田市の交番で警察官が包丁で刺され拳銃を奪われた事件と神奈川県愛川町で受刑者が刃物を持ち出して逃走した事件である。

 吹田の事件は16日の早朝に発生し、翌17日の朝に強盗殺人未遂で容疑者は逮捕された。監視カメラの映像をリレー方式で追う捜査により、犯人の足取りをたどり早期逮捕に至った。

 愛川の事件は19日午後1時半ごろ実刑判決が確定した受刑者を検察庁の職員が収容しようとしたところ車で逃走し、事件5日目の23日早朝に厚木市でようやく逮捕された。この事件では事件発生の夜には厚木市内で逃走車両が見つかり、警察が周辺のコンビニエンスストアの防犯カメラ映像を調べたところ、容疑者が写っていた。さらに別のコンビニの防犯カメラにも容疑者が写っていたが、逮捕まで日数を要している。

 いずれの事件も地域住民を不安に陥れ、地域のイベントが中止されたり、小中学校が休校になるなど市民生活に多大な影響を及ぼしている。このような事件では犯罪者の逃亡期間が長引くほど、捜査対象となる範囲は広がり、関係者の数も増え、市民生活へ及ぼす影響も大きくなる。「監視カメラ」をネットワークでつないで、AI(人工知能)による顔認証による犯罪捜査システムの導入を検討すべき時期ではないだろうか。未来都市を待たなくても今すぐ実現できるように思う。

 愛川の事件に関していえば、逃走犯は実刑が確定した受刑者で当然本人の顔写真を含む個人データは警察が保有している。もしコンビニの監視カメラが警察のネットワークにつながっていれば、19日の夜に犯人が立ち寄った際に、リアルタイムで足取りをつかむことも可能なはずである。

 先日スマートシティの一つを見学する機会があったが、設置された監視カメラの映像で地域の様子を自宅のテレビでモニタリングすることが可能となっていた。監視カメラが地域のいたるところに設置されていて、外部からの侵入者を防ぐ見えない「壁」の役割も果たしている。

 一方、公園などの様子を見られる各家庭のモニターでは、わざわざ個人が特定できないように解像度が落とされていた。自分の子供がいるかどうかを確認するには、服装を含めた背格好の雰囲気で判断するしかない。プライバシー保護のため、個人を特定できないようにしている。

 日本では、性能は同じでも場合によって監視カメラを防犯カメラ、時には見守りカメラと言い換えなければならない。

 画像認識技術を用いた高性能な監視システムを導入するには、プライバシーの保護が問題となるが、安全を優先する発想の転換も必要ではないだろうか。

【プロフィル】森山博之

 もりやま・ひろゆき 旭リサーチセンター、遼寧中旭智業研究員。早大卒後、旭化成工業(現旭化成)入社。広報室、北京事務所長などを経て2014年から現職。大阪府出身。