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産廃処理施設をめぐる住民投票条例案が可決 静岡・御前崎市議会

 静岡県御前崎市に建設が計画されている産業廃棄物処理施設をめぐり、御前崎市議会は5日、9月定例本会議を開き、建設の賛否を問う住民投票条例案を賛成多数で可決、成立した。市民の直接請求による住民投票の実施は県内初となる。年内にも実施される見通しだ。

 住民投票では施設建設に「賛成」か「反対」の二択で民意を問う。法的拘束力はなく、「市長は過半数の意志を尊重する」と規定されている。

 この日の本会議では一部議員から「環境被害や農林水産業への悪影響について県や国に問い合わせたところ全国どこにも報告がなかった。デマに基づく条例制定請求だ」などと反対意見が出たが、賛成派議員らが提出した修正案が賛成11、反対2で可決され、大多数が賛成に回った。

 問題となっている施設は大栄環境(大阪府和泉市)が計画する「御前崎リサイクルエネルギープラザ」。一日最大約560トンの産廃を焼却して発電する県内最大級の施設になる予定で、令和3年4月着工、5年4月の供用開始を目指している。建設予定地は住民の共有財産である池新田財産区にあり、管理者の柳沢重夫市長が土地賃貸借契約書に押印している。現在、県の環境影響評価(アセスメント)を実施中。

 一方、産廃施設の建設をめぐっては「誘致過程が不透明だ」とする市民団体「住民投票で決める会」が今年4月に署名運動を開始。ダイオキシン被害をはじめ環境被害を懸念する市民から幅広く支持され、1カ月間で有権者の44%に当たる1万1829人の署名を集めた。直接請求を受けた柳沢市長は「財産区管理会が住民の声をもとに承認されたものと認識していた」と釈明した上で、「賛意を示す」とする意見書をつけて6月市議会に条例案を提出。14人の全議員が参加する特別委員会に付託審議され、投票運動などにかかわる一部規定を修正し、可決していた。

 採決後、柳沢市長は記者団に対し、「(結果を)真摯に受け止め、将来のまちづくりに沿っていけるのか判断していきたい」と述べた。住民投票で決める会の中山啓司代表は「いよいよスタートラインに着いたなと決意を新たにした。このまちをどうしていくか考えて100%の市民に参加してもらいたい」と意気込んだ。