イスラエル極右伸長 「政治と宗教」争点に 17日国会再選挙 

 
ネタニヤフ首相とトランプ米大統領の親密ぶりをアピールする与党・リクードの広告を見上げるユダヤ教超正統派の男性=9日、イスラエル西部テルアビブ近郊(ロイター)

 【カイロ=佐藤貴生】イスラエルで17日に行われる国会(一院制、定数120)の再選挙で、政治と宗教の関係をめぐる議論が起きている。ユダヤ教の戒律を厳格に守る「超正統派」への優遇政策を撤廃し、不公平を是正すべきだ-と訴える極右政党「わが家イスラエル」が支持を集めているからだ。議論はネタニヤフ首相の続投の可否を左右する争点になりつつある。

 リーベルマン前国防相が率いる極右「わが家イスラエル」は、4月の選挙で5議席を獲得。同党を含めた右派・宗教勢力は全体で65議席を占めたが、「わが家」はユダヤ教超正統派とは組めないとして連立政権入りを拒否。過半数(61議席)確保を頓挫させ、ネタニヤフ氏が主導した連立協議を不調に終わらせた。

 リーベルマン氏は対パレスチナ強硬派という点ではネタニヤフ氏と同じだが、超正統派については他の国民同様、徴兵義務を課すべきだと主張する世俗派だ。

 超正統派は1948年のイスラエル建国以降、徴兵を免除されてきたほか、政府は神学校での教義研究や生活支援のため、補助金を給付。多くは就労や納税もしていないとされる。イスラエル有力紙の記者は、「1980年代から超正統派の人口増が顕著になり、近年は政治、社会問題として議論が先鋭化していた」と解説する。

 世俗派の間では超正統派への補助金給付のため、負担を強いられている-との不公平感が募っている。

 世論調査によると、今回の選挙で「わが家」は世俗派ユダヤ人の支持を集め、10議席前後を得て前回選挙から倍増する勢いだ。

 ネタニヤフ氏の政党「リクード」など、「わが家」を除く右派・宗教勢力は58~59議席にとどまるとみられる。これに対し、首相続投に反対のガンツ元軍参謀総長が率いる中道政党連合「青と白」などの中道・左派勢力は53議席前後と、いずれも過半数に届かず、政権樹立は困難な情勢だ。「わが家」がキャスチングボートを握ることも予想される。

 ネタニヤフ氏には複数の汚職疑惑があり、検察当局が投票の2週間後にも同氏の事情聴取を始めるとの観測がある。一方、ネタニヤフ氏と親密な関係にあるトランプ米政権は選挙後、包括的な中東和平案を発表する意向を示しており、再選挙の結果は内政だけでなく国際政治にも影響を与える可能性がある。