中国、SNSを利用し対外広報強化 つぶやけない習氏はトランプ氏に悩む
中国政府が会員制交流サイト(SNS)を利用した対外広報を強化している。ツイッターを通じて中国を攻撃するトランプ米大統領に対抗する狙いだ。ただ中国は国内でツイッターの閲覧を事実上禁じており、習近平国家主席が自らツイッターでつぶやくわけにはいかない。自在に情報発信して国際世論の誘導を図るトランプ氏への対応に苦慮している。
「トランプ氏のツイッターでの指摘は事実と異なる」。中国当局は3日に記者会見を開き、米国に違法流入している医療用麻薬、フェンタニルの主要流出源が中国だとするトランプ氏の訴えに反論した。
トランプ氏は8月にツイッターで「習氏はフェンタニルの供給を止めると約束したが、実行していない」と投稿。中国政府は約6400万のフォロワーを持つトランプ氏による対中批判の拡散を問題視し、投稿のたびに内容の打ち消しに躍起になっている。
中国外務省は最近、中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」に国内外メディアの質問を随時受け付けるグループチャットを立ち上げた。また20万以上のツイッターのフォロワーを持ち、SNSで影響力のある「インフルエンサー」とも称される外交官、趙立堅氏を副報道局長に起用。中国外交筋は「発信力を強化する狙いだ」と説明した。
「中国の指導者は威厳を保つ必要があり、好き勝手につぶやくわけにはいかない」。中国政府関係者は習氏がSNSを使わない理由をこう語る。
中国は国内でツイッターや交流サイトのフェイスブックへの接続を遮断し、当局に不都合な情報の流入を防いでいる。
一方、人民日報や国営中央テレビなど共産党・政府系メディアはツイッターなどにアカウントを開設。貿易協議をめぐる米国の対応を批判するなど中国の主張を積極的に発信し、反転攻勢を狙う。
国際社会は中国によるSNSを通じた情報操作への警戒を強めている。ツイッターとフェイスブックは8月、中国当局とつながっているアカウントを排除。米グーグルも傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」上で組織的な印象操作があったとして、多くのチャンネルを凍結した。いずれも香港で続く抗議活動の妨害を狙っていたとされる。
習指導部は一党独裁体制に不利な情報の拡散を恐れ、国外のSNSを排除してきた。国内で厳しく言論を統制しながら、日本や欧米などで保障される「言論の自由」を盾に国際世論を誘導しようとする姿勢は国際社会の反発を招き、「世論戦」に苦戦する要因になっている。(北京 共同)
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新技術・手段の熟知は不可欠
北京大国際関係学院の王逸舟・前副院長の話 ツイッター外交はトランプ米大統領のある種の発明であり、興味深い。情報化時代に発信手段が増える中、政治家や外交官も習得して利用すべきだが、中国はまだ不十分だ。中国ではツイッターやフェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)の使い方を誤ると、面倒なことになるとの懸念がある。しかし新たな時代の指導者はこうした変化と向き合うべきだ。トランプ氏と同じようにやる必要はないが、新たな技術や手段を熟知することは不可欠だ。中国外務省や一部の役人もインターネットや通信アプリ「微信(ウィーチャット)」で発信を始めている。将来的に改善されていくだろう。(北京 共同)
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【用語解説】中国のSNS規制
中国では政府に批判的な情報などへのアクセスを防ぐため「グレート・ファイアウオール(ネット版万里の長城)」と呼ばれる検閲システムがある。ツイッターやフェイスブックなど海外の会員制交流サイト(SNS)への接続を遮断、短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」や通信アプリ「微信(ウィーチャット)」など中国独自のSNSが普及している。当局は体制に批判的な投稿を削除し、投稿者を摘発するなど厳しく管理している。(北京 共同)
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