【数字から見えるちば】農地集積率23・9% 地域の将来見据え話し合いを ちばぎん総研主任研究員・江田直子

 
都道府県別目標集積率、農地集積率、目標値との乖離幅

 千葉県の台風15号による農林水産業の被害額は11日時点で東日本大震災を上回る約427億5500万円、台風19号の被害額は16日時点で約5億400万円に上っている。被災者の方々には心よりお見舞いを申し上げるとともに、各種支援制度などを活用して早期に復旧・復興が実現することを願いたい。

 しかし、高齢の農業従事者の中には、復旧作業の難しさや後継者の不在などから、やむを得ずリタイアや規模縮小を選択せざるを得ない人もいるだろう。そうした場合に「農地中間管理機構」を通じて、農地の有効利用や経営効率化を進める担い手に貸し出す方法がある。

 農地中間管理機構は、平成26年に公表された「日本再興戦略」において、農業の成長戦略の一つとして創設された機関である。荒廃農地の発生防止や分散農地の集積・集約を図り、担い手の確保や規模拡大、営農コストの削減につなげることを狙いとしている。同機構を介して農地の転貸が成立すれば、農地の貸し手は機構から賃料を受領できるほか、固定資産税の軽減措置が受けられる。

 政府は、「令和5年に日本の全耕地面積に占める認定農業者(農業の中核的な担い手)等による耕作面積のシェア(集積率)を8割にする」という目標を掲げている。目標値が9割と高い県は、秋田、山形、新潟などの米どころを主体とした8県で、逆に都市部が多い県は目標値が低い(大阪25%、神奈川28%、東京31・4%)。都市部と地方部を併せ持つ千葉県の目標値は、51%で低い方から数えて全国11位だ。

 一方で、制度の創設から5年が経過した千葉県の昨年時点の実績は、23・9%(全国38位)で目標を27・1%ポイント下回り、目標値との乖離(かいり)幅の全国順位も全国23位で、低めの目標値に対しても達成率が高いとはいえない。

 県内で農地の集約が進まないのは、県南部で中山間地が多いことのほか、地権者との対話が進んでいない(保有志向が強い)ことも要因といわれている。農林水産省の「農地中間管理機構の活動状況等に関するアンケート調査結果」をみると、本県においては「地域の話し合いが農地の流動化に結びついていない」との回答が100%となるなど、農業関連団体の連携や地域の話し合いが不足している。

 町村別にみると、旭市(59・8%)、銚子市(53・5%)など平坦(へいたん)な土地が多い地方部や、習志野市(44・2%)、松戸市(37・5%)、船橋市(35・8%)など消費地に近く、生産性の高い果実や野菜を手掛ける都市部においては集積が進んでいる一方で、中間山地が多い富津市(4・8%)や大多喜町(6・5%)などでは集約が遅れている。

 農地のさらなる集積を進めるためには、法人資本も含めて認定農業者を増やすことや、ほ場整理の推進に加え、地域の意思統一が不可欠である。とりわけ、農地の集積に成功した事例をみると、地域で土地利用についての話し合いが重ねられ、将来像を共有することがポイントとなっている。

 台風被害に伴う農村の復旧・復興に取り組む際には、機構や農業関連団体、農業者が一丸となって地域の農業の将来像を描きながら進め、農村の持続可能性を高める建設的な復旧・復興の実現につなげたい。(寄稿)