【アメリカを読む】フェイスブック解体論に「闘う」 リブラ離脱組も現れザッカーバーグ氏正念場
米交流サイト(SNS)大手フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、社員向け会合で発言した音声データが流出し、釈明に回る事態となった。音声データは、巨大IT企業の解体を持論とするエリザベス・ウォーレン上院議員が大統領選挙で当選すれば、訴訟も辞さないとするザッカーバーグ氏の「闘争宣言」を収録。企業の存立を脅かす危機には徹底抗戦する姿勢をあらわにした。
発端は10月1日、米ネットメディア「バージ」の報道だ。ザッカーバーグ氏が7月の社員向け非公開会合で語った音声データを入手したバージは、「公開の場で使う言葉より率直な」同氏の発言を伝えた。
「もし彼女が当選すれば当然、法的闘争に出る。そして勝利する」
そう話したザッカーバーグ氏が対抗心を示した「彼女」とは、民主党左派で大統領選の有力候補、ウォーレン氏だ。同氏は「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる米IT大手による市場支配を問題視し、フェイスブックや米検索大手グーグルなどの「企業解体」を持論としている。
ザッカーバーグ氏は「サイテーだよ。そりゃ、自分たちの政府を訴えたくない」と述べつつ、「誰かが生存を脅かそうとするなら、マットに出て闘う」と対決姿勢を強調した。
フェイスブックは7月、個人情報保護の大量流出問題をめぐり、米連邦取引委員会(FTC)から50億ドル(約5400億円)の制裁金を科されることに同意。当時は政府や議会内でも、次第にIT大手を規制するルール強化を支持する声が強まっていた。
強気の闘争宣言は、次第に外堀が狭まる中、しばしば「帝国」と呼ばれる自社でのリーダーシップを誇示して社内の引き締めを図ったようにも映る。
ウォーレン氏は報道にすぐに反応した。ツイッターへの投稿で「本当に『サイテー』なのは、フェイスブックのような巨大ITが、違法な反競争的行為に加担し、民主主義を守る責務をおろそかに扱うことだ」と指摘した。
一方、ザッカーバーグ氏も報道を受け、問題となった社員向け会合の詳細を公開する奇策に出た。同氏は発言の全文を自身のフェイスブックに投稿し、「公開しない内部向けのものだったといえ、外に出した今は誰でもチェックできる」と説明した。また、10月3日には同じ社員向け会合をライブ中継。会合を完全公開することで、従業員からの「情報漏れ」リスクをつぶす手を打った。
フェイスブックへの投稿内容やグーグルの検索システムをめぐっては、トランプ米大統領が、支持層と重なる保守的な言論が削除されたりして不利に扱われていると不満を強めている。
ザッカーバーグ氏は9月下旬、ホワイトハウスでトランプ氏と面会したほか、共和党で巨大IT批判の急先鋒(せんぽう)であるジョシュ・ホーレー上院議員らとも会談した。
政治の中枢である首都ワシントンにおもむき、政権・議会との摩擦を和らげる取り組みの一環とみられる。
昨年4月にザッカーバーグ氏が議会証言に登場した際には、「遅きに失した」と公開の場での説明責任を回避してきたかのような非難を受けた。
同氏は10月23日、下院公聴会で、主に暗号資産(仮想通貨)「リブラ」構想について証言することが決まった。各国政府から懐疑的な目を向けられているリブラをめぐっては、すでに責任者である幹部が議会で証言している。
ザッカーバーグ氏は、いよいよ自ら先頭に立ち「社会との対話」に臨む構えのようだ。
こうした中、米決済サービス大手のペイパルが10月4日、リブラの運営組織「リブラ協会」から脱退すると発表した。発足当初の約30社・団体から離脱表明が出たのは初めてだ。米紙ウォールストリート・ジャーナルはほかの金融大手も、規制当局からの監督強化を恐れ、リブラ構想への参画を再考していると報じており、ザッカーバーグ氏の指導力が問われる局面を迎えている。(ワシントン 塩原永久)
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