【林業最前線(上)】オーストリア、4年に1度の展示会 山に合った機械で高生産性
オレンジ色のヘルメットをかぶった2万人以上の人々が林道を埋め尽くし、数百台の林業機械が山林に持ち込まれ、稼働していた。
オーストリアの首都ウィーンから南に約80キロの静かな森。14世紀初頭、オスマントルコ軍に対抗するために築かれたフォルヒテンシュタイン城周辺の山林で、今月8日から10日まで林業機械の展示会「オーストロフォーマ」が開かれた。4年に1度の“祭典”で、欧州を中心に151の企業・団体が出展した。林業先進国・オーストリアの国策的イベントだ。
大挙する日本視察団
日本国内で「高性能林業機械」と呼ばれているものが林道沿いに並ぶ。立木を伐倒して枝を払い、規定寸法に切断して丸太にする「ハーベスター」、移動可能な人工支柱からロープを張り、丸太をつるした状態で集材する「タワーヤーダー」などだ。
オーストリアは急斜面の山が多く、地形の類似性から日本林業界が手本としている。特筆すべきは同国では植林、伐採、運搬、加工までの過程がスムーズで、収益性のあるビジネスとして成立している点だ。建材、合板、紙などに使用した後も、最終的に木を燃料として無駄なく活用する「カスケード利用」も実践している。
ここ数年、同国を訪問する日本の地方自治体や森林組合が後を絶たず、「年間100組以上」(国内機械メーカー幹部)が現地入りしたこともあった。今回の展示会にも、少なくとも150人の国内林業関係者が参加していたとみられる。
「この重機の導入コストは?」。展示会2日目の9日、日本政策投資銀行地域企画部の松本晃次長が、欧州の機械メーカー担当者に質問していた。
政投銀は林業に将来性があるとみて独自に研究や視察を行ってきた。最大の関心事は北米で主流の「森林投資ファンド」を軸とした森林ビジネスの確立だが、オーストリアが得意とする林業機械運用の研究にも余念がない。「山やそれぞれの地域に合った機械を選ぶ必要がある」。展示会会場から車で約2時間、オーストリア第2の都市、グラーツ郊外。標高約1500メートルの山の中で、ヨハネス・ロシェック氏(71)が日本視察団を前に強調した。
国内でも成長産業に
ロシェック氏はオーストリア最大の森林所有企業、マイヤー・メルンホフで長年「森林官」を務め、現在も同社コンサルタントとして活躍する。
この日、日本視察団はマイヤー所有の山で、大型の架線や重機を駆使した木材集積現場を見学した。30分足らずで約45トンの丸太を仕上げてトラックに運び込む-。十分な幅員を持つ強固な林道がある同国ならではの生産性の高さだ。
ただ、技術面で日本がオーストリアに劣っているわけではない。松本氏は「インフラや制度面の環境条件が整えば、国内林業も成長産業になり得ることを視察で確信した」と語った。
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高度成長期に大量に植林された国内の人工林が伐採の“適齢期”に入った。低迷してきた林業に突破口はあるのか。課題と展望を探る。
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