米、国連にパリ協定離脱通告 小泉環境相「極めて残念」
トランプ米政権は4日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から離脱すると国連に正式に通告した。トランプ大統領が2017年6月に離脱の方針を表明しており、規定に基づき通告が可能になった最初の日に手続きをした。実際の離脱は1年後の20年11月4日になる。ほぼ同じ時期に大統領選があり、大きな争点になるとみられる。
トランプ氏は南部ケンタッキー州で開いた選挙集会の演説で、パリ協定は「(米国にとって)恐ろしくコストが高くつき、不公平だ」と批判し、離脱の正当性を主張した。
米国は中国に次ぐ世界2位の温室効果ガス排出大国。温暖化と関連するとみられる異常気象が世界各地を襲い、対策強化の必要性が叫ばれる中、20年パリ協定の本格始動目前の離脱強行は改めて国際的な非難を呼びそうだ。
トランプ氏は演説で、国内の環境規制を緩和してきたことをアピールし、二酸化炭素を多く排出する石炭の活用を今後も推進する考えを強調。ポンペオ国務長官も声明で「米国は化石燃料、原子力、再生可能エネルギーの全てのエネルギー源と技術をクリーンかつ効率的に利用する」と主張した。
小泉進次郎環境相は5日の閣議後の記者会見で「脱炭素社会の実現は喫緊の課題で、離脱の通告は極めて残念だ。トランプ大統領に翻意を促しても不可能だと思う」と述べた。菅義偉官房長官も「残念だ」と述べ、気候変動問題に対処するため、米国と協力する方法を探る考えを示した。
米国では来年11月3日に大統領選が予定される。パリ協定を重視する野党民主党候補が勝利した場合、21年1月の次期大統領就任後に協定に再加入する可能性もある。再加入は国連に文書を送り、30日後に認められる。
パリ協定は、各国が温室効果ガス削減の自主的な目標を掲げて取り組む仕組み。16年11月4日に発効し、規定では3年後から離脱通告できる。(ワシントン 共同)
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【用語解説】パリ協定
地球温暖化の深刻な被害を避けるための国際協定。今世紀後半に世界の温室効果ガス排出を実質ゼロにして、産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1.5度に抑えることを目指す。全ての参加国が自主的な目標を掲げて対策に取り組み、5年ごとに状況を検証し、目標の引き上げを図る仕組みがある。京都議定書に代わり2020年に本格始動する。15年12月に採択された。(共同)