すさまじい過積載で高架が崩落 中国の運輸業界、経済苦境で違法行為が横行

 
10月10日、中国江蘇省無錫で崩落した国道の高架橋(ロイター)

 中国江蘇省無錫(むしゃく)で10月上旬、過積載のトレーラー2台が国道を走行していたところ高架橋が約80メートルにわたって崩落し、5歳の幼稚園児を含む3人が死亡する事故が発生した。この惨劇を受けて、中国の運輸業界で危険な過積載が横行している実態がクローズアップされ、当局は取り締まり強化に躍起だ。ただ近年の景気低迷による受注量の減少で運輸業界は競争が激化しており、利益確保のため過積載に手を染める業者は後を絶たない。

 高さ約20メートルの高架橋が斜めに傾いて倒れ、その下を走行していた乗用車はボンネットと前輪だけを残してぺしゃんこに押しつぶされた-。10月10日夕方、無錫の国道高架橋で崩落事故が発生し、現場の凄惨な映像がインターネット上で拡散した。

 崩落に巻き込まれた乗用車には近くに住む31歳の女性と5歳の女児が乗っていた。また46歳の男性が運転する乗用車も押しつぶされ、計3人が死亡した。

 高架橋が崩落する原因となったのは、熱延鋼板を満載して走行していたトレーラー2台だ。無錫市の事故調査グループによると、車両2台の積載制限はいずれも30トン前後だったが、実際に積載していた鋼板の総重量はそれぞれ約160トンで、積載制限の約5倍に達していたという。高架橋の積載制限(1台55トン)も大幅に上回っていた。

 トレーラー2台のうち1台は現場を通過後に崩落したため難を逃れたが、1台は高架橋とともに落下し、運転手が重傷を負った。いずれも無錫市内の同じ運送会社に所属するトレーラーで、2人の運転手と会社幹部は当局に拘束された。

 現地の物流関係者は「このあたりの業者はみな過積載をやっている。そうでないと稼げない」と中国誌・財新週刊に証言。別の運送業者によると、業者らは道路管理部門の役人や交通警察の幹部に「仲介人」を通して賄賂を渡し、過積載の取り締まり情報を事前に入手して摘発を免れているという。

 共産党機関紙、人民日報系のサイトも、中国の運輸業界では積載制限の2、3倍の過積載が「暗黙のルール」になっていると認めた。

 ただ、こうした過積載は、車両のブレーキが効かなくなるなど事故を誘発する原因となる。事故を引き起こしたトレーラーの運転手の知人は「大型貨物の運転手はみな過積載の危険性を知っている」としつつ「どれだけ積むかは上司が決める。家族を養うため稼がなくてはいけないんだ」と中国紙・新京報に語っている。

 過積載は、今回の事故のような崩落事故の原因にもなる。中国青年報によると、中国では2007~15年の9年間で、走行車両の過積載によって28カ所の高架橋が崩落した。過積載車両の通行は橋を損傷し、使用年限を大幅に縮める。今回崩落した高架橋は供用開始から15年に満たない。ただ現場付近は鋼材関連の工場が多く、過積載のトラックが多数走行していたことから、市民の間では「事故が起きるのは時間の問題だ」との声も出ていたという。

 多くの運送業者は近年、過積載をしなければ利益を出せない状況に追い込まれていた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、燃料価格の高騰や受注量の減少による競争激化を受けて、過積載は運送業者が生き残るために不可欠な手段になっていたという。

 19年7~9月期の中国国内総生産(GDP)の伸び率は実質で前年同期比6.0%となり、四半期ベースで過去最低を更新。8月の工業生産も17年ぶりの低水準となる前年同月比4.4%増にとどまった。国内の景気低迷が運輸業の苦境と過積載の横行に拍車をかけている。(北京 西見由章)