【政界徒然草】気候変動対策に大鉈ふるえぬ小泉環境相のジレンマ 「電源構成でがんじがらめ」 

 
国連本部で開かれた環境関連会合でスピーチする小泉進次郎環境相=9月22日、米ニューヨーク(共同)

 小泉進次郎環境相が気候変動対策をめぐるジレンマに悩んでいる。小泉氏は温室効果ガスの排出削減目標をより高く設定できないか思案するが、そのためには二酸化炭素(CO2)排出量が特に多い石炭火力発電の稼働を控える必要がある。ただ、将来の電源構成の在り方を所管するのは経済産業省で、自らに直接の権限はない。当面は自治体レベルでの取り組みを後押しし、CO2排出削減の機運を地方から盛り上げる考えだ。

 「どの国のカウンターパート(交渉相手)も理想と現実のはざまで、どうすれば最大限の可能性を追求できるのか腐心している。万国共通の環境相が抱えるジレンマだ」

 小泉氏は11月22日の記者会見で、海外の環境相らとの会談を通じて感じた共通の悩みを打ち明けた。各国とも、環境省は経産省より規模が小さな傾向があり、気候変動対策に関する発言力が弱いという。

 気候変動対策は、小泉氏が就任直後から日本がリーダーシップを取りたいと訴えていた政策テーマだ。9月22日、外交のデビュー戦となった米ニューヨークでの環境関連会合では、「われわれは今日から変わる。私たちの都市、国、世界の脱炭素化を一緒に達成したい」と華々しく宣言した。

 ただ、政府は温暖化対策の長期戦略をすでに6月に閣議決定しており、温室効果ガスの排出削減目標は、「2050(令和32)年までに80%削減」だ。複数の環境先進国が進める「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」とは開きがある。そもそも、昨年政府が定めたエネルギー基本計画では、2030(同12)年度の電源構成で石炭火力がなお26%を占め、小泉氏の威勢のいい言葉を実現するのは難しそうにもみえる。

 小泉氏は10月中旬、歴代の環境政務官経験者と会食した際、温室効果ガス削減について「日本も大幅に見直した目標を掲げたい」と意気込んだ。ただ「日本は『電源構成』でがんじがらめになっている。政策で野心的な目標を打ち出すのは難しい」と本音も漏らしたという。

 国の政策として削減目標を引き上げるのは難しい-小泉氏が最近、代替案として熱心に取り組んでいるのが「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」を自治体レベルで進めることだ。

 地方の首長と面会する際には、既に「ゼロ宣言」した自治体の取り組みを紹介している。

 もちろん小泉氏の影響だけではないが、就任前は東京都や京都市など4自治体にとどまっていた「ゼロ宣言」自治体は、12月4日時点で21自治体まで増えた。

 米タイム誌は11月に小泉氏を世界で最も影響力がある「次世代の100人」に選出した。この理由として取り上げられたのが、横浜市などが「ゼロ宣言」を掲げたことだ。横浜市の関係者は「小泉さんの提案は(市の決定に)大きな影響はなかった」と漏らすが、小泉氏は「『ノンステートアクター』(非国家主体)の活躍は大変力強い」と「ゼロ宣言」の広がりを歓迎する。

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 小泉氏は9月に初入閣して以降、東京電力福島第1原発の「処理水」問題などを通じ「発言が抽象的で実行力が感じられない」(自民党閣僚経験者)などと批判された。

 当時も処理水を直接所管する経産省との調整能力が焦点になったが、温室効果ガスの削減目標を動かす上でも、経産省とどう向き合うのだろうか。

 地味ながら、経産省が関わる政策分野にも切り込んで成果を挙げてきたのが、前任の原田義昭前環境相だった。

 原田氏は6月、レジ袋の有料化に向け、早期に法整備する考えを表明した。記者会見では「レジ袋は量からすれば軽いが、環境政策の象徴的な運動になる」とも説明した。ただ、有料化するには容器包装リサイクル法の改正が必要となるが、所管する経産省と調整した形跡は乏しい。原田氏は経産省の機先を制し、力業で有料化への道筋を開いたといえる。

 8月には東京電力の社長らを大臣室に呼び出し、神奈川県横須賀市で進む石炭火力発電所の建設計画の着工見直しを求めた。先進7カ国(G7)で日本が唯一、石炭火力発電所の新設を続け、海外から気候変動への取り組みが後ろ向きだと批判されているためだ。

 発電所をめぐる事業者の環境影響評価(アセスメント)の手続きは完了し、環境相が口出しできる案件ではない。世耕弘成経産相(当時)が原田氏に「筋が違う」と怒りを伝えるなど、独断専行的な手法に批判も出たが、原田氏は「政治家の務めだ」と意に介さなかった。

 政策テーマを定め、賛同者を募り、周囲と協調しながら改革機運を高める-そうしたやり方が小泉氏の政治手法だろう。ただ、原田氏の奔放なスタイルも物事を動かす上では参考になるかもしれない。政治家の評価は美辞麗句を並べることでなく、「結果」をどう残すかにかかってくる。

(政治部 奥原慎平)