政府のIR戦略に暗雲「マイナスの影響」 秋元衆院議員の収賄容疑
政府が来夏の東京五輪後の成長戦略の柱と位置づけるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の開業はIR担当の内閣府副大臣を務めた自民党の秋元司衆院議員(48)=東京15区=の収賄容疑で冷や水を浴びせられた形だ。これを機にIRに対する懸念が再燃し、開業に向けた手続きが遅れれば地方活性化の起爆剤としての期待が外れ、経済に暗雲が立ちこめるおそれもある。
国内でIR誘致が本格化したのは平成11年、石原慎太郎東京都知事(当時)が東京・台場へのカジノ誘致を提唱してからだ。大阪府も22年に橋下徹知事(同)が「関西発展の起爆剤となる」として誘致を表明。同年、超党派の「国際観光産業振興議員連盟(カジノ議連)」が発足し、カジノ合法化への模索が始まった。
開業に向けた環境整備が進んだのが、24年末に発足した第2次安倍晋三政権下だ。首相は26年5月、訪問先のシンガポールでIR施設2カ所を視察後「IRは成長戦略の目玉となる」と強調。28年には自民党が中心となりIR推進法(議員立法)が成立し、カジノ解禁への道が開かれた。30年7月にIR開業までの一連の手続きを定めたIR実施法が成立・公布され、IRの設置の上限を当面3カ所とすることやカジノへの日本人入場回数を週3回、月10回までに制限し、入場料として6千円を徴収することなどが盛り込まれた。
ただ、IRに対する国民の不安は根強く、関連法案は与野党対決の主戦場になってきた。支持母体の創価学会のアレルギーが強い公明党はIR推進法の採決をめぐり、衆院で井上義久幹事長(当時)、参院で山口那津男代表がそれぞれ反対票を投じた。実施法は担当が公明党の石井啓一国土交通相(当時)だったために賛成に回ったものの、ギャンブル依存症対策基本法は公明党の強い要請で実施法成立の前提となった。
IR誘致を目指す自治体の事業者選定の前提となる基本方針についても、政府が7月の参院選前の公表を見送ったため、自治体の事業計画に遅れが生じていた。先の臨時国会でカジノ免許の付与や事業者の監督を担う「カジノ管理委員会」の委員長に福岡高検検事長を務めた北村道夫氏ら4人を充てる人事案が承認され、開業に向けた環境整備が前進したばかりだ。
政府は1月下旬を目途に、基本方針を公表。各自治体は令和3年1~7月に区域整備計画を国に申請し、2020年代半ばに国内初のIRが誕生する見通し。だが、今回の収賄容疑によって「マイナスの影響はある。決して望ましいことではない」(政府関係者)との声も上がっており、今後の展開次第でIR開業がさらに遠のく可能性もある。(永原慎吾)
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