【中国を読む】2020年の中国、「ターゲット型」政策支援強化か
2019年の中国経済をめぐっては、習近平政権が主導するデレバレッジ(債務抑制)に向けた取り組みを受けた内需鈍化が懸念された中、米中摩擦の激化による外需への下押し圧力が重なり、景気は減速感を強めた。7~9月の実質国内総生産(GDP)成長率は前年比6.0%と、四半期ベースの成長率として統計開始以来最も低い伸びとなるなど、減速が顕著になっている。(第一生命経済研究所・西浜徹)
こうした中で昨年末、恒例の「中央経済工作会議」が開催され、20年の経済政策の運営方針について討議がなされた。今回の小欄では、その内容から20年の中国経済の行方について展望してみたい。
景気減速に国内要因
中国では、毎年12月に習国家主席が主催する中央経済工作会議が開催され、翌年の経済政策の運営方針に関する討議が行われる。この会議は、共産党最高指導部(党中央政治局常務委員)や国務院(内閣)指導部のほか、地方政府や国家機関、人民解放軍、国有企業など幅広い分野の責任者が一堂に会する形で開催され、足元の経済状況に関する「現状分析」と翌年のマクロ経済の運営方針の「方向性」に関する意思共有が図られる。なお、この会議において決定した方針は、最終的に翌年春に開催される全人代(全国人民代表大会=国会)に諮られるとともに、予算などの形で正式に決定する仕組みとなっている。
19年の同会議での討議内容をみると、現状認識に関しては18年同様に減速感が強まっているとの見方が据え置かれた。ただし、18年は景気減速について、米中摩擦など外部要因を主な要因とする姿勢が強かったものの、19年は構造的かつ循環的な国内要因も影響しており、経済成長モデルの転換が景気の足かせになっているとの認識が示された。
その上で、積極的な財政政策と穏健な金融政策を継続する姿勢が示された。さらに、政策運営の方向性の鍵を握るリスクに関する認識についても17、18年は金融システミックリスクを「3大リスク」の筆頭に掲げたことで、デレバレッジの推進につながった経緯があるものの、19年は「マクロレバレッジの安定を実現する」とするなど、債務の縮小に主眼が置かれた状況は大きく後退している。
こうした状況を勘案すれば、20年の中国政府は、過去2年が過剰債務への対応に直面させられた状況からややスタンスを変更する可能性を示唆している。こうしたことは、不動産政策をめぐる動きにも影響を与えそうである。19年についても、基本姿勢は過去2年と同様に「住宅は住むためのもので投機対象ではない」とするなど、投機をいさめる内容は残されたものの、都市ごとに柔軟な政策対応余地が生まれる可能性がうかがえる。
そのポイントとして、都市部貧困層の住宅問題の解決として、具体的にはスラム街(棚戸区)の改造といった文言が含まれていることがある。過去には、スラム街の改造を通じて地方都市などで不動産投資が活発化した経緯があり、今回の方針はこれまで引き締め一辺倒で進められた不動産政策に対する引き締め度合いが緩む可能性を示唆している。
過剰債務なお高水準
その上で、全体的な政策の運営方針については、「目標実現のために安定性を優先する必要があり、マクロ政策は安定、ミクロ政策は柔軟に社会政策に裏打ちされたものにする」ほか、「マクロ政策を将来を見据えたものとしつつ、目標を絞ってより効果的なものにする必要がある」とするなど、過去数年と同様に政策支援の対象を絞る「ターゲット型」の傾向を強めることが考えられる。
経済成長率目標については具体的な数値は示さなかったものの、現状認識などを勘案すれば19年(6.0~6.5%)から引き下げられる可能性は高く、筆者は「6.0%前後」と一定程度の景気減速を容認すると予想する。ただし、足元の非金融企業部門向けの信用残高は一時に比べてピークアウトしているものの依然過剰債務が意識される水準にあり、債務拡大を通じた景気拡大の余地は限定的である。
米中摩擦の行方には一部に改善の兆しもみられるが、引き続き難しい政策対応を迫られる場面は続くと捉えた方が良いであろう。
【プロフィル】西浜徹
にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。42歳。福岡県出身。
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