防災・減災対策に520億円 千葉県新年度当初予算案 一般会計最大1兆8195億円
千葉県は30日、令和2年度当初予算案を発表した。昨年9~10月に発生した一連の台風・大雨被害からの復旧・復興など防災・減災対策に520億6800万円を盛り込むなど一般会計総額は前年度比3・3%増の1兆8195億円となり、7年連続で過去最大を更新した。また、昨年1月に発生した野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=の虐待死事件を受けた児童虐待防止対策や、県内で8競技が開催される東京五輪・パラリンピック関連事業に予算を重点的に配分した。
防災・減災対策では、昨年10月25日の大雨で約3500棟の浸水被害が発生した一宮川流域の浸水被害ゼロを目指す「一宮川流域浸水対策特別緊急事業」に17億2800万円を計上。今後10年間で調整池の増設や川幅の拡幅、堤防のかさ上げなどの対策を行う。このほかには、昨年9月の台風15号で大きな被害を受けた安房地域のビワ農家支援で、防風ネットの設置や木を低くして栽培する強風対策を施した強風対策モデル果樹園を設けるなどの「特産果樹産地再生事業」に420万円を盛り込んだ。
五輪・パラ関連では、7月2~4日に県内を走る五輪聖火リレーの運営費用に4億9500万円を計上。観客の暑さ対策として2860万円を投じ、競技会場となる幕張メッセ(千葉市美浜区)と釣ケ崎海岸(一宮町)に日よけテントやミストシャワー、簡易救護所などを備えた「クールスポット」を設置する。
予算の裏付けとなる歳入は、昨年10月の消費税率引き上げに伴い地方へ配分される「地方消費税」が増えることなどで、県税収入が過去最大の8413億円になる見込み。一方、歳出も社会保障費が高齢化の進展による介護給付費負担金の増加などで142億円増え、3114億円に膨らむ見通しだ。
このため、新年度予算では県の「貯金」に当たる財政調整基金を約500億円取り崩す予定で、同基金の年度末残高は森田健作知事が就任した平成21年度以降で最も少ない6億1800万円となる見込みだ。
県民の「借金」に当たる県債残高は前年度比181億円減の3兆655億円。県民一人当たりに換算すると「貯金」は2万9千円、「借金」は49万8千円となる。
■児童虐待対策 児相運営を外部監査
新年度予算で千葉県は、児童相談所の運営が適正に行われているかを外部の第三者が監視する制度を創設するなど、野田市の女児虐待死事件を受けた児童虐待防止対策に力を入れる。
児相の機能強化には、総額5億1100万円の予算を投入。目玉事業として、県管轄の各児相で(1)個々の事案で子供の権利が守られているか(2)運営状況が適正か-などを外部の第三者が評価する「運営監査委員会」を設置する。職員間の情報連携を迅速に行うため、出張時の連絡などに使用する公用スマートフォンを導入したり、リアルタイムで緊急会議ができるよう児相に受信用の端末を整備したりといった対策も行う。
慢性的に不足している職員数については令和4年度までに約260人増やすことを目指し、2年度は児童福祉司と児童心理司を約110人増員する。保護児童数が急増している一時保護所は、令和3年2月ごろまでに県管轄6児相の総定員を現在から56人増やし、171人にする。
野田市の事件でも問題となった児童虐待とドメスティックバイオレンス(DV)対応部署の連携強化を図るため、DV防止・被害者支援にも2億2943万円を計上。柱の一つとして、新たに児相でDV相談を実施する。
組織の見直しでは、児童家庭課に児相の管轄区域の見直しなどを担当する「児童相談所改革室」を新設。DV対策業務を男女共同参画課から児童家庭課に移管し、児童虐待とDVに一体的に対応できる体制を構築する。
一時保護解除後の児童や保護者への継続的な支援も強化。管轄区域内の人口が多く、対応件数も多い、中央、市川、柏の3児相にこうした支援を専門的に行う「支援課」を新たに設け、職員を配置する。
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