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神奈川・厚木のアユ養殖施設が再生 生産8トン可能…安定供給に期待

 アユの漁場や釣りの名所として知られる神奈川県厚木市で、養殖施設「厚木あゆ種苗センター」の再生工事が完了し、使用不能だった水槽設備が新しく生まれ変わって1月から本格稼働を始めた。年間約3トンだった生産量が約8トン程度に増え、河川などへの安定供給体制が整ったことから、漁業関係者や釣り人が期待感を高めている。アユの6次産業化で地域振興を図りたい行政関係者の鼻息も荒い。

 「多くの人にアユのおいしさを知ってもらい、漁業振興はもちろん、観光振興にもつなげたい」。完工式では、同市の小林常良市長がこう述べ、再生した設備の出来栄えをたたえた。式典には漁業関係者ら約50人が出席し、センターの新たな門出を祝った。

放流特化型の運営

 同センターは、平成27年末に神奈川県内水面漁業協同組合連合会(横浜市)が、加盟団体の相模川第二漁業協同組合(厚木市)から運営を引き継いだ。ただ、築約60年で施設が老朽化しており、当時は全12面あった水槽のうち一部が水漏れなどで使用できない状態だったため、6面を29年末に解体し、改修しながら養殖事業を続けていた。

 施設再生に伴う総工費は約1億4千万円。新設したのは11メートル四方4面(養殖用)▽8メートル四方2面(同)▽4メートル四方2面(選別用)-の計8面の水槽。これにより、既存の丸池6面(いずれも直径10メートル)と合わせて計14面となり、アユの生産は、これまでの年間約3トンから約8トン程度に増やせるようになるという。

 同センターはアユの稚魚を持ち込み、一定の大きさにまで育ててから市内外の主要な河川・海に放流する、放流特化型の養殖施設だ。稚魚は、神奈川県内水面種苗生産施設(相模原市)や相模湾内でとれたものを持ち込み、0・5グラム程度から13~20グラム程度にまで育てる。放流先は相模川、中津川、相模湾など。“野生味”がなく、放流に適さない個体は市場に流通させる。

6次産業化に意欲

 同連合会の山口芳郎会長は「放流に特化した施設は全国的にも珍しく、このような施設が神奈川県内にできたことを誇りに思う。安定した漁場が保てるように努力したい」と決意を語った。厚木市の担当者によると、市内では、漁師や釣り客らから安定的な漁獲や釣り場を求める声が高まっていた。

 漁場確保のため、河川などに放流してきたアユは県外からの持ち込みに強く依存してきたが、割高な輸送コストや病気発生のリスクなどの問題もあり、センターの機能増強によって、市内でまかなえるようになることへの期待は大きい。6次産業化への期待もある。

 同センターで生産されたアユは「相模の鮎(あゆ)」として、一定の基準を満たした神奈川県内産の農畜産物を対象とした「かながわブランド」(29年)に登録されている。このため、市は民間と一体でアユの養殖、漁獲、商品開発・製造、PRに力を入れている。

 市農業政策課の担当者は「特産の甘露煮の製造・販売のほか、イベントに合わせて塩焼きを販売する機会も増えるだろう。アユを通した6次産業化で、地域振興を図りたい」と述べ、目を輝かせていた。

 【厚木市とアユ】

 厚木市内を流れる相模川で古くからアユ漁が盛んに行われてきた。大正から昭和にかけて料亭文化が花開き、アユを求める客でにぎわった。現在は毎年6月1日の解禁日以降、多くの釣り客が訪れる。市は昭和20年代から「あつぎ鮎まつり」を例年開いているなど、アユを前面に押し出したまちづくりに力を入れている。

 【農林漁業の6次産業化】

 1次産業の農林漁業と2次産業の製造業、3次産業の小売業などの一体的な推進により、農山漁村の地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取り組み。農山漁村の所得向上や雇用確保が期待できる。