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無電柱化 独自条例で全国のさきがけ 「広い空取り戻せ」つくば市の取り組み

 電線のない空を取り戻そうと、独自の条例で取り組む自治体がある。

 ゆとりある歩道に植樹帯の緑があふれ、筑波山を望む青空がより間近に感じられる。2016年に全国の自治体で初めて無電柱化条例を制定した茨城県つくば市。約40年暮らす蓮沼和子さん(65)は「空の広さが街の魅力。よその街に行くと、クモの巣のような電線の多さに驚いてしまう」と笑顔で話す。

 国の研究・教育機関が集まる学研都市として1960年代から開発が進んだ。中心市街地や国家公務員宿舎周辺は電線の地中化を図り、すっきりした街並みが特徴だ。

 宅地開発で一変

 しかし11年、公務員宿舎を削減する政府方針で状況は一変する。廃止された宿舎跡地で宅地開発が始まると、電線が次々と張り巡らされた。12年には竜巻で電柱が倒れ、道路をふさいで住民の救助が遅れる事態も発生。開発事業者に無電柱化への協力を要請したものの応じるケースはなく、独自の条例で規制するアイデアが浮上する。

 「街が壊されると危機感を感じた」。発案者の同市市街地振興課係長、小林遼平さん(37)は当時を振り返る。「今ある電柱の撤去より、新たに立てさせない対策が先決だった」と条例化の狙いを明かした。

 条例は、つくばエクスプレスの駅周辺など4地域、計約380ヘクタールを無電柱の義務化区域に指定。事業者側に電線を埋設する管路の整備とその費用負担を義務付け、電柱新設を禁止した。違反した場合は勧告の上、事業者名を公表するなど異例の厳しい内容だ。

 「面」で規制

 最大のポイントは、道路を「線」で規制せず、民有地と道路を一体として「面」で規制したことで、宅地造成の際、道路上でなく住宅敷地内に電柱を立てる“抜け道”が多いことを踏まえた。「道路だけ制限しても無電柱化は絶対に進まない」と小林さん。

 条例への反発も予想されたが、開発事業者側は「最初からルール化されていればやりくりのしようがある」と受け止め、現在まで違反は0件。義務化区域で分譲を始めた住宅街は、防災面の安全性をPRして売れ行き好調という。市民からは「義務化区域を拡大して」との声も寄せられ、市は今後の検討課題とする。

 影響は全国の自治体に広がっている。つくば市の内容とは異なるが、山岳リゾートの景観保全を目指す長野県白馬村は18年に推進条例を施行。電柱倒壊でインフラ復旧に支障が出た阪神大震災の教訓から、兵庫県芦屋市も続いた。東京都は小池百合子知事の公約通り17年、都道府県で初の条例を制定。今後も各地で動きが出そうだ。

 「電柱や電線のない美しい街並みは地域の資産。つくばの取り組みが全国のスタンダードになれば」。小林さんは期待を込めて語った。