米大統領選、トランプ氏再選の鍵握るキリスト教福音派 中南米系への浸透図る
11月3日投開票の米大統領選でトランプ氏再選の鍵を握るのが2016年の前回大統領選で同氏を支持したキリスト教福音派の動向だ。米西部ネバダ州ラスベガスの福音派の教会を訪ねると、白人ほどには同氏を強く支持していないとされるヒスパニック(中南米系)や黒人の信徒の間でも、人工中絶の反対など信仰上の理由のほか、困窮した信徒の経済的自立を支える雇用拡大策が支持されていた。
米政治サイト「ファイブサーティーエイト」によると、福音派は全人口の4分の1を占める票田だが、人種ごとに支持政党は分かれる傾向にある。16年の大統領選で白人の8割がトランプ氏に投票したのに対し、黒人は7割が民主党を支持、中南米系は4割が無党派だった。
トランプ陣営にとって前回大統領選で僅差で民主党候補のクリントン元国務長官に敗れたネバダ州は、人口の3割が中南米系で切り崩しの余地がある。ペンス副大統領の訪問が予定されるラスベガスの福音派教会「サンライズ・バイブル・チャーチ」の幹部、サンディ・ホール氏(73)は「ペンス氏訪問はトランプ氏再選に向けた選挙活動の一環だ」と話した。
ホール氏によると、最近の入信者はカトリックから改宗する中南米系が多い。
その一人、ロバート・ロドリゲスさん(29)はメキシコからの移民。幼少期にカトリック教会で洗礼を受け、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)の教徒だった時期もある。改宗の理由は「福音派の礼拝のスタイルが気に入ったから」。
2月23日朝の日曜礼拝に参加してみると、エレキギターやシンセサイザーの伴奏で出席者が宗教歌を歌う礼拝の雰囲気は明るい。ロドリゲスさんは「7歳で米国に来て、母親は仕事を2つ掛け持ちして弟と私を育ててくれたが、生活は常に苦しかった」と振り返り、「娘は温かい環境で育てたい」とスカーレットちゃん(1)を抱きしめた。
ここでは黒人のトランプ氏支持者も多い。ラティシャ・ロバーツさん(44)は「入信していない子供は3人とも反対だけど」と打ち明けつつ、身の上を話した。以前は麻薬の密売組織に関わり、刑務所への入退所を繰り返す荒れた生活を送っていたという。救いを求めて教会を訪ね、信じる神ができたことで「生まれ変わった」。教会の教えにならい、妊娠後期の人工中絶反対を唱えるトランプ氏に投票すると決めた。
トランプ氏を支持する理由はもう一つ。雇用の拡大だ。「密売組織にいたころは大金を持っていても警察の目を気にしていた。今は違う。ちゃんと働いて稼いだお金は自分のお金。私は自立できている」。カジノを併設する有名ホテルのレストランでシェフとして働く今の自分が誇りだ。
ビリー・クロウン牧師(52)は「経済的自立は自尊心を育む」と指摘し、「減税と規制緩和で企業活動を活性化する現政権の方針は正しい」と訴えた。
大統領選と宗教の関係を調査するため米国を訪れた名古屋市立大の松本佐保教授は「ネバダ州でトランプ氏が勝利するまでには至らないかもしれないが、人口が増えている中南米系への浸透を目指す戦略は、福音派の教会などを通じて全米で展開されるのではないか」と分析している。(ラスベガス 平田雄介)
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