【5時から作家塾】アップルウォッチがリードするスマートウォッチ市場、今後の動向とは

 
Apple Watch Series 5

 現在スマートウォッチ市場において、圧倒的なシェアを握るのが米アップルが開発・販売する「アップルウォッチ」だ。アップル自体は出荷本数を発表していないが、調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、2019年のアップルウォッチの出荷本数は前年から36%増え、3070万本に達したという。そしてこの数字は、スイスの腕時計業界全体の出荷本数である2110万本を大きく上回ったというのだから驚きだ。つまりオメガなどを傘下に収めるスウォッチや、高級ブランドとして有名なロレックス、タグホイヤーなどが束になってかかっても、遠く及ばなかったというのである。

 アップルウォッチの勢いは当面とどまることはなく、調査会社IDCは、今後4年間はアップルがスマートウォッチ市場をリードすると予測している。

 売上を伸ばしているのはアップルウォッチだけではないが、その売上は他のスマートウォッチ・メーカーを凌駕している。調査会社スタティスタは、世界のスマートウォッチ出荷本数について、2020年は8050万本(うちアップルウォッチは4650万本)、2021年は9770万本(同5700万本)、2022年は1億1300万本(同6610万本)と見積もっている。

 ではなぜこれほどアップルウォッチが売れているのか。他のスマートウォッチとの違いは何なのか。

 アップルウォッチの魅力の一つは、さまざまな健康管理機能を搭載していることだ。なかでも最近注目度の高いのが、不規則な心拍を通知する機能、そしてアップルウォッチ・シリーズ4から搭載されている心電図機能だろう(残念ながら日本ではどちらの機能も使えない)。アップルウォッチを着用していたおかげで、心房細動の兆候となる不規則な心拍が通知され、深刻な症状が出る前に医師の診察を受けて一命を取りとめたという報告が、世界各地で後を絶たない。またアップルウォッチ・シリーズ4以降のモデルは、激しい転倒を検出する転倒検出機能、周囲の騒音がひどい場合に通知するノイズレベル測定機能も搭載する。

 魅力の二つ目はiPhoneとの親和性の高さだ。iPhoneと組み合わせることで、電話の通話やメールの着信、音楽視聴だけでなく、決済や公共交通機関の乗り降りも行える(セルラーモデルであればiPhoneを別の場所に置いていても、これらの機能が使える)。アップルは巨大なiPhoneユーザーベースをうまく活用し、アップルウォッチを売り込むことに成功している。

 そしてアップルウォッチが売れているもう一つの理由は、アンドロイド搭載スマートフォンと組み合わせて最適に機能するスマートウォッチが存在しないことではないだろうか。グーグルはアンドロイドOSを基盤としたスマートウォッチ向けのウェアOSを開発しているが、スマートフォン向けOSと比べると成功しているとは言い難い。スマートウォッチ市場においてアップルに次いで高いシェアを持つサムスンは、スマートウォッチにおいては独自のタイゼンOSを採用している。

 ただし、グーグルは同市場3位のフィットビット買収を発表しており(2月末現在、規制当局の最終的な承認を待っている状態)、実現すれば状況が変化する可能性はある。

 今後スマートウォッチはどのように進化していくのだろうか。確実に言えるのは、さらに多くの健康管理機能が搭載されるということだ。フィットビットは1月、ソフトウェア・アップデートによって、自社のスマートウォッチおよびフィットネストラッカーで、血液中の酸素飽和度を測定できるようにした。競合するアップルウォッチはまだ搭載していない機能だ。またアップルウォッチは近い将来、血糖値測定機能を搭載するとの噂も以前からく繰り返し浮上している。そのうちにカルテの管理や医療機関とのやり取りも行えるようになるかもしれない。

 高齢社会となり、増え続ける医療費を抑制し、病気の発症を未然に防ぐ予防医療の観点からも、ユーザーが手元で簡単に自分の健康状態を管理できるスマートウォッチは、今後さらに普及していくだろう。(岡真由美/5時から作家塾(R)

【プロフィール】5時から作家塾(R)

編集ディレクター&ライター集団

1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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