ファーウェイに“犯罪集団”の烙印 組織犯罪を取り締まる「RICO法」とは
【アメリカを読む】
米司法当局が、米国企業の知的財産を窃取したなどとして、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を追起訴した。司法省は、知財を盗み出した社員への報奨制度を同社が設けていたと主張し、通例はマフィアなどの組織犯罪を取り締まる「RICO法」を適用した。“犯罪集団”の烙印(らくいん)を押された形となるファーウェイは起訴事実を全面的に否定。司法省の大物OBを弁護チームに招聘(しょうへい)するなど徹底抗戦の構えだ。(ワシントン 塩原永久)
さまざまな「手口」
「極めて異例だ」
米司法省が2月13日、ファーウェイが検察当局に追起訴されたことを発表すると、刑事司法の専門家から驚きの声が出た。同省が従来、マフィアやギャングなどの犯罪集団を一網打尽にする狙いの通称「RICO法(米国組織犯罪規制法)」を適用したためだ。
起訴状によるとファーウェイは、米企業から通信機器のルーターに用いられるソフトウエアのプログラムなどを窃取。ライバルから知財を盗むことに成功した社員にボーナスを出す報奨制度を設けるなどし、米国の計6社から企業秘密を不正入手した。
RICO法では、検察当局が「組織全体の犯罪性」(法学部教授)を立証する必要がある。企業秘密を不正入手する上での組織的な関与を証明しなければならず、有罪を勝ち取るハードルは決して低くないと指摘されている。
検察側が暴こうとしているのは、機密入手のためファーウェイが組織的に展開した工作活動だ。起訴状には、知財保有企業の退職者を雇用して情報を入手したり、研究所の非公開情報にアクセスできる立場の大学教授らの研究者を使い、重要情報を収集させるといった手口が描かれている。
起訴状によると、競合企業から重要情報を入手した社員に報いる報奨制度は、2013年に正式導入された。機微情報は暗号化されて社に送付され、社内には情報の重要性を評価するグループが置かれた。ライバル追い落としに重要だと評価されれば、月ごとにボーナスが支給され、特に評価が高い情報提供者には半年ごとの報奨金も追加支給されたという。
「法執行ではない」
米検察当局は昨年1月、銀行に虚偽の説明をして対イラン制裁を逃れようとしたなどとして、ファーウェイや同社の孟晩舟副会長兼最高財務責任者(CFO)を起訴。今回は米国法人など関係する4社も対象に追起訴し、罪状は計16となった。
米当局は、ファーウェイが、米国や国連の制裁対象となっていた北朝鮮を「A9」、イランを「A2」のコード名で呼んで取引したり、制裁対象国あての配送物から同社のロゴを削除するよう取引先に指示する隠蔽工作をしたと主張している。知財窃取を中心とした不正行為に、ファーウェイが組織的に関与した側面を浮かび上がらせる狙いだ。
一方、ファーウェイは声明で、「法執行というより(米中ハイテク)競争を理由にファーウェイに取り返しのつかない打撃を与えようとする試みだ」と米当局を批判した。司法省は、知財を不正取得したファーウェイが、世界市場で競争力を勝ち得る取り組みが「成功した」と指弾したが、対する同社は、巨額のR&D(研究開発)投資により通信業界をリードしていると真っ向から反論している。
起訴事実を全面的に否認する構えとみられるファーウェイ側は、検察官経験者の「ヤメ検」弁護士らで作る弁護団をつくり、法廷闘争を優位に運ぶ狙いだ。
米メディアによると同社は、ワシントンやニューヨークに本拠を置く有力法律事務所の敏腕弁護士を多数投入。オバマ政権時代の司法副長官だったジェームズ・コール氏を招聘したことも判明している。
司法省の最高幹部だったコール氏は、ファーウェイを追及する米当局側の手の内を熟知しているはずだ。米司法当局はニューヨーク州の連邦地裁に対し、コール氏の弁護団選任は「利益相反が生じる」として、ファーウェイ案件の弁護資格を認めないよう要求していた。裁判所は今月下旬に入り、米当局の請求を認めたことを公表し、まずは米当局側に軍配を上げた。
今後の法廷闘争も熾烈(しれつ)を極めそうだ。RICO法を根拠に有罪と判断されれば、中国とのハイテク覇権争いを繰り広げる米国で、一段と厳しいファーウェイ包囲網が敷かれるのは間違いない。
RICO法に詳しい専門家によると、米当局は有罪の判断が下された企業に対しては、不当利得に相当する企業資産の差し押さえ・没収が可能になる。ファーウェイの場合、知財の不正窃取が認定されれば「対象案件が大量になりかねない」(大学教授)とも指摘される。同社はRICO法の不正認定を何としても回避したいとみられ、裁判の長期化も予想される。
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