海外情勢
比、絶滅危惧の国鳥繁殖へ 保護団体が森林保護にも取り組み
両翼を広げると2メートルにも達するフィリピンの国鳥フィリピンワシ。開発に伴う森林伐採や乱獲で絶滅の恐れが指摘されており、現在の推定生息数は800羽程度。国鳥を絶やすまいと、南部ミンダナオ島ダバオの保護団体が繁殖と森林再生に取り組んでいる。
ダバオ郊外のフィリピンワシセンター。森林に囲まれた敷地のおりの中で、20羽近くのフィリピンワシが飼育されている。鋭い爪とくちばし。おりの外の訪問者をじっと見据える。大きな翼を突然広げると、見ていた子供が迫力に驚いて走って逃げていった。広報担当のネリッサ・マルソさんによると、同島以外に北部ルソン島、中部レイテ島とサマール島の森林地帯でしか生息が確認されていない。1960年代から密猟や森林伐採で減少が進み、80年代には300羽ほどだったとされるが「ミンダナオ島で長年、政府軍とイスラム武装勢力の紛争が続いたため、正確な統計は取れてこなかった」(マルソさん)。
同センターは繁殖に乗り出し、92年に人工孵化(ふか)に初めて成功。これまでに約30羽が誕生した。国外での繁殖も目指し、昨年6月にはつがいの2羽をシンガポールに貸し出した。近年では植林に力を入れ、近隣住民とともに苗木を植えている。
ダバオはドゥテルテ大統領の地元で、2017年1月に安倍晋三首相が訪問。滞在中に開かれたフィリピンワシの命名式では、安倍首相が「Sakura(桜)」と名付け、両国の友好演出に一役買ったこともある。
同センターを休暇で訪れていた教師、オスカー・レグナーさんは「紛争が終わり、ミンダナオ島は開発が進んでいくだろうが、国の宝のフィリピンワシと森林は守りたい」と話した。(ダバオ 共同)