企業再開で渋滞戻るも消費は踊らず GDPマイナスの中国経済のいま
【中国観察】
新型コロナウイルス蔓延(まんえん)による影響が直撃し、2020年1~3月期の実質国内総生産(GDP)が四半期ベースで1992年以降初のマイナスとなった中国。中国政府は一段の景気悪化を防ぐため企業の操業再開を急ぐものの、世界経済の悪化などにより通年で76年以来となるマイナス成長に陥るという予測も浮上する。新型コロナの震源地として世界で最も早く経済が打撃を受けた中国の現状は、今後、経済再開が進む各国の先行指標にもなるとみられる。首都・北京で数字の裏にある中国経済の現状を取材した。(中国 三塚聖平)
渋滞が起きる理由
「車の量が増えた。出退勤の時間帯の渋滞は以前と同じ水準に戻った」
北京中心部で50代の男性運転手がこう話した。感染拡大が深刻だった2月には、北京でも大半の企業が休業や在宅勤務の措置をとった。そのため出勤などのため外出する人が少なく、普段は大渋滞を起こす大通りの交差点も車がスムーズに流れていた。それが企業の事業再開に伴い、再び渋滞が起きるようになった。
《北京市政府は4月11日、市内の一定規模以上の工業企業3010社のうち3007社が操業を再開したと明らかにした。再開率は99・9%となる計算だ》
ただ、渋滞には別の事情もあるとみられる。感染を避けるため公共交通機関があまり利用されていないと指摘される。新型コロナ流行後、北京では自家用車などを使って出勤している人が多く、市内中心部では歩道に路上駐車している車が以前より目立つ。
市民の足であるバスも、車内を見ると乗客の姿はまばらだ。バスは市中心部と郊外を結ぶ路線の制限が続くなど、多くの市民は常態化しつつある感染対策により不便な生活を余儀なくされているのが実態だ。
「セールでも来店客が増えない」
3月単月の主要経済指標を見ると対照的な数値がある。生産と消費だ。
《工業生産は前年同月比1・1%減と、1~2月の13・5%減から大きく戻した。一方で、消費動向を示す小売売上高は15・8%減。1~2月は20・5%減だったので、工業生産と比べると回復の勢いの鈍さが鮮明だ》
生産は、中国政府の後押しもあって大企業を中心に事業再開が進んでいる。1月下旬から2月にかけて企業活動が停止していたため、3月はたまっていた海外受注に対応する動きがあって回復に勢いが出ていると指摘される。
それに対して消費は、経済の先行きが不透明なうえに感染の再流行懸念がくすぶる中で、消費者が慎重な姿勢を崩していないことがうかがわれる。
中でも影響が大きいのが高額品だ。
《中国自動車工業協会によると3月の新車販売台数は前年同月比43・3%減。3月の小売売上高では宝飾品関連が30・1%減の悪化を見せている》
「2月に営業を再開したけれども、それからずっと売り上げは振るわない」
北京市中心部のショッピングモールにある欧州系のアクセサリー店で、20代の女性店員は厳しい営業状態を打ち明けた。
この店舗では一定額以上の商品を購入した客にネックレスをプレゼントするといったサービスを行っているが「なかなか来店客は増えない」という。
来店客が少ないため、営業時間の短縮を続けている店も少なくない。また、来店客を選べない店舗は感染リスクもあるため、「店員には特別手当が支払われている」(女性店員)というブランド店もあった。
「昨年末から外で飲んでいない」
高額品と並んで苦境が伝えられるのが飲食業だ。
《3月の小売売上高では飲食収入が46・8%減と大きく落ち込んだ。1~2月は43・1%減で悪化幅は拡大している》
「以前は休んでいた週末も営業を始めた」
北京市中心部のカフェの男性店員は静かな店内でこう述べた。約2カ月の休業期間を経て営業を再開したものの、以前より来店客が減っているためだという。
北京市内では営業を再開する飲食店が増えているものの、食事時も客席が埋まっていない店が少なくない。客足の落ち込みを補うために、店頭販売や出前サービスへの対応を始める店も相次いでいる。
北京では飲食店などにおけるグループでの会食を禁じる措置が出ており、店頭に「団体客お断り」という張り紙を出した店が多い。団体客はテーブルを分けるといった対策をとって受け入れている店もあるが、北京市内で働く40代の女性は「感染の恐れがあるので外食はしていない。最後に店で飲んだのは昨年末だ」と話す。感染への警戒感が人々の間にくすぶり、思うように消費が回復していない事情がうかがわれる。
経済活動が「完全な停止状態」(エコノミスト)に陥った一時期と比べれば中国経済が回復しているのは事実だが、感染の「第2波」や世界経済悪化といった懸念を抱えて、先行きへの不透明感が依然として根強いのが現状だ。
関連記事