就活面接解禁 オンラインで内々定 「コロナ後の人材」に期待も
令和3年春卒業・入社組の就職・採用活動の面接といった採用選考が解禁になる6月1日を控え、トヨタ自動車など多くの大手企業がインターネットを使ったオンライン面接だけで内々定を出す方針を相次ぎ打ち出している。第1の狙いは新型コロナウイルスの感染リスクの回避だが、「新型コロナ後」のビジネスに対応できる人材を探せるとの期待も膨らむ。対面方式には企業の雰囲気を知ってもらえる効果もあるとはいえ、オンライン抜きでの採用活動はもはや困難。日本の就職・採用活動は大きな転換点を迎えている。
「今後、ウェブ商談が増える中、オンライン面接で力を発揮できる学生を選ぶことは間違いない」
オンライン面接だけで内々定を出す方針の三菱ケミカルホールディングス(HD)の採用担当者は新方式に前向きだ。
感染拡大にあわせて定着が進むオンライン面接には「学生の移動に伴う感染リスクの回避」(キヤノン)といった利点があり、トヨタ自動車もオンライン面接で内々定を出す方針を明らかにした。半面、接続不良や音声、映像の乱れなどの懸念もあったが、キリンHDの担当者は「論理的思考やコミュニケーション能力はオンラインでも問題なく判断できる」と話し、優秀な人材の発掘に期待する。
一方、企業側はオンライン面接に慣れていない学生への配慮もみせる。損害保険ジャパンはオンラインによる1次面接の時間を例年よりも15分長い1時間に延長。富士通は従来の選考基準などと差が出ないように、面接官向けの研修を行い、スキル向上を急ぐ。
もちろん企業の中には「対面」へのこだわりもある。ある商社の担当者は「説明会などもネットだったため、学生が会社に来てもいない。入社する会社の雰囲気がわからない中で内々定を出すのは難しい」と打ち明ける。日本生命保険は学生との相談を踏まえ、オンラインや対面などの面接方式を検討していく。
ただ、感染拡大でビジネスモデルの転換を迫られる業種も多い中、オンライン面接を全く実施しない大手企業はきわめて少数。例年6月1日に大手企業にリクルートスーツを着た学生が殺到する光景は今年は見られそうにない。
リクルートキャリア就職みらい研究所の増本全所長は「最終面接までをオンラインとするケースはかなりの比率になるだろう」と指摘。「対面の面接では(学生の)雰囲気や印象なども重視されるが、オンラインでは言葉が重視され、論理的な思考ができているかが大切になる」としている。
来春卒業・入社組の就職・採用活動は新型コロナで例年通りの進行は難しく、大和証券グループ本社が通年採用への切り替えを表明。パナソニックは選考期間を9月まで延長する。さらに業績悪化懸念が強まる航空業界ではANAHDに続き、日本航空も採用活動の中断に踏み切っており、日本の就活は大きな転換点を迎えている。