低水準続く原発稼働 コロナ後見据え回復急げ
地球温暖化問題への対応を国際的に議論する国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)は昨秋に続いて今秋に英グラスゴーで開かれる予定だったが、今回の新型コロナウイルスのおかげで来年まで開催を延期することがこの4月に決まった。新型コロナ問題の深刻さからみてその開催を延期するのは当然といってよいのだろうが、といって温暖化問題の重大性が変わったわけでは全くない。(地球環境産業技術研究機構理事長・茅陽一)
CO2排出量もいずれ増加
確かに最近は世界的に新型コロナのために経済活動が低下して二酸化炭素(CO2)の排出も低減したことは事実だろうが、新型コロナが下火になって経済が元に復すればCO2の排出も戻ってしまうことは明らかである。一方、世界の多数の国で決めたパリ協定の「2度目標」は依然として存在し、その実現の第一歩としての2030年目標は日本の場合13年比排出26%減という形で10年後に迫っている。このような状況で日本が温暖化の長期対策から手を抜くことはどう考えてもそれでよい、とはいえない。この段階で政府でも民間でもあらためてこの対応をどう進めるかの議論を行うべきではなかろうか。
そうした立場にたって、筆者が特に言いたいのは非炭素エネルギーの推進、わけても原子力の回復の問題である。再生可能エネルギーについては、狭い日本でも過去から増加の一途をたどっており、10年代でも電力の中での再エネ比率は10~16%ないしそれ以上(水力を含む)へと増加してきている。しかし、原子力については依然としてどこをみてもほとんど報道がないのが現状である。一方、現在では発電している原発はわずか5~6基で、その電力への貢献は2~3%しかない、というありさまである。
そこで筆者は既存原発の状況を少し調べてみた。周知のように現在日本で原発の運転が許可されるのは原子力規制委員会の厳しい審査を通ることが前提だが、現在稼働中のものに加えて審査済み、審査中の原発を数えてみると25基、約2400万キロワットである。ただ、そのうち30年まで生き残るのは仮に寿命を60年まで延長可能としても十数基で1350万キロワット程度である。その平均稼働率を大変楽観的に見積もって、2000年前後の原発好調時の80%という数字を使って可能な発電可能量を計算してみるとほぼ0.1兆キロワット時という数字が出てくる。わが国の最近の総電力需要はほぼ1兆キロワット時だから、その10%ということになる。
10%シェアは低下へ
しかし、この数字がどこまで現実的かといえば否定的な理由がいくつも出てくる。まず実現性だが、現在の日本で原子力規制委の審査を通りながら周辺自治体ないし住民の合意がとれず稼働していない原発が7基もあり、合意を今後どのように得るかが問題になる。また仮に合意が得られたとしても、過去の好調時と同じ80%という高い稼働率を回復できる保証は全くない。
第2に、この計算には現在まだ原子力規制委の審査を通っていない原発が5基430万キロワット含まれているが、そのすべてが審査を通過し、さらに周辺自治体ないし住民の稼働への合意を得る可能性は相当低いだろう。
第3に、この10%シェアという数字は30年の電力需要が現在以上に増えない、という前提に基づいているが、民生需要の電化進展や電気自動車の普及などを考えると人口の減少を考慮しても電力需要が増加する可能性は十分にあり、そうなれば10%シェアは低下せざるを得ない。
そして、政府の2030年計画をみると電力での原子力比率は20~22%と10%の2倍以上である。このギャップをどうするのか。こうした原子力の将来問題の困難さを政府も、そして世間もあらためて認識し、その回復への道を現在からただちに探索すべきでないか。筆者はそれを強く願うものだ。
【プロフィル】茅陽一
かや・よういち 東大工卒、同大学院修了。東大電気工学科教授、慶大教授を経て、1998年地球環境産業技術研究機構副理事長、2011年から現職。84歳。北海道出身。