海外情勢

トルコ、旧大聖堂モスク化で批判高まる

 トルコのエルドアン大統領は10日、世界遺産イスタンブール歴史地区を代表する建造物アヤソフィアを、再びイスラム教のモスク(礼拝所)とする大統領令に署名した。キリスト教の大聖堂、モスク、博物館という歴史を経てきた遺産の重大な転換点。国際的な批判や宗教対立の懸念が高まっている。

アヤソフィア内部に残るキリスト教のモザイク画(中央)とイスラム教の装飾(2つの円盤)=6月(共同)
トルコの世界遺産イスタンブール歴史地区を代表するアヤソフィア=1日(共同)

 キリスト教のモザイク画とイスラム教の装飾が残り、共存や調和の象徴と呼ばれてきた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)のアズレ事務局長は「事前協議のない決定で非常に遺憾だ」とする声明を発表。ユネスコは、アヤソフィアの「普遍的な価値」に害が及ぶ可能性を指摘した。

 トルコ最高行政裁判所は10日、無宗教の博物館と定めた1934年の閣議決定を無効とする判決を発表した。これを受け、イスラム教を重視するエルドアン氏はモスク化を決定。イスラム教の礼拝を24日に行うと表明した。

 アヤソフィアの内壁には聖母子像や天使が描かれている。地元メディアによると、人物が描かれたキリスト教の壁画を礼拝時に隠す計画で、開閉できるカーテンを使う案や、照明システムを利用して見えなくする案が議論されているという。

 モスク化は、エルドアン氏がイスラム保守層の支持を固める機会となる。新型コロナウイルスによる景気悪化から国民の目をそらすのが狙いだという批判もある。(イスタンブール 共同)