自民、新総裁に菅氏を選出 携帯大手が料金値下げ論に戦々恐々
菅義偉首相が誕生することで、世界的にも高水準とされる日本の携帯電話料金の値下げをめぐる議論が活発化するのは必至だ。総務相経験もある菅氏の肝煎りとして、段階的に取り組んできた課題だが、さらに踏み込んだ政策を打ち出す可能性がある。消費者にとっては朗報だが、携帯大手は電波利用料の見直しにまで言及されており、戦々恐々としている。
菅氏が値下げにこだわる背景には、料金の高止まりがある。総務省によると、今年3月時点の世界6都市の標準的な料金プランは東京がニューヨークに次ぎ、2番目に高額だった。昨年10月に通信料金と端末代金の分離義務付けなどの競争促進策を実施したが、世界ではなお高水準にあることが示された。
通信行政への関わりが深い菅氏は2018年夏に「日本の携帯料金は4割程度下げる余地がある」と発言し、値下げ競争の促進策を主導してきた。それだけに制度整備を進めても、シェア9割の寡占状態である大手3社が値下げに消極的な姿勢であることにじくじたる思いが強い。
13日には出演したテレビ番組で、値下げが実現しない場合に「電波利用料の見直しをやらざるを得ない」との発言に踏み込んだ。国に支払う電波の利用料金が増えれば、その分、携帯大手の収益は圧迫される。「真意や趣旨はまだ分からない」と総務省幹部も困惑するが、政策がこれまでの競争促進から、直接的な圧力をかけるフェーズに転換する事態にもなり得る。「脅しだとすれば問題だ」。携帯関係者は絞り出した。
菅氏が圧力を強めるのは携帯大手の営業利益率20%という収益性の高さも背景にあるが、これには「国内市場は頭打ちで携帯料金収入では稼げない」「第5世代(5G)移動通信システムの通信エリア拡大などで今後、年数千億円の投資がかかる」と携帯大手の幹部は反論する。
とはいえ、菅氏が意欲を示す一段の携帯値下げは不可避の情勢といえる。総務省もさらなる競争促進策の整備に向け、「何ができるか細かく確認している」(幹部)という。だが、一方で「応援は心強いが、詳しいだけに怖さもある」と官僚側も戦々恐々とする本音を漏らす。(万福博之、高木克聡)