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簡単でない携帯料金値下げ 法改正直後で「大玉もうない」

 政府が携帯電話料金の値下げ圧力を強めている。菅義偉首相の看板政策に総務相や公正取引委員会委員長は就任直後から強い意欲を示しており、狭まる包囲網に携帯電話大手も警戒感を隠せない。値下げは暮らしに直結するだけに注目されているが、実は改革のための法改正をしたばかりで、新たな一手を見いだすのは容易ではなさそうだ。(万福博之)

 「百パーセントやる」。武田良太総務相は18日、菅氏から携帯料金引き下げの指示を受けてこう強調した。その前日に公取委の古谷一之委員長も「競争環境を確保し料金値下げが実現できるよう貢献したい」と発言。「次は消費者庁あたりも出てきそうだ」。携帯大手関係者は自虐気味に語る。

 もっとも、値下げ熱の高まりには総務省も頭を抱える。ある幹部は「一発で効くような大玉はもうない。何ができるかを細かく確認し、潰していくしかない」と本音を漏らす。

 総務省では平成30年夏に菅氏が「携帯料金は4割引き下げる余地がある」と発言したことを受け、通信ルールの総点検に着手。昨年10月には電気通信事業法を改正し、通信料金と端末代金の分離義務付けや2年縛り契約の解約金引き下げなどを実施した。また楽天の新規参入の認可といった競争促進策も推進してきた。

 こうした動きを踏まえ、昨年春にはNTTドコモとKDDI(au)が「最大4割値下げ」と銘打った新料金プランを発表。だが、値下げ幅が大きいのは限定的なプランで、多くの消費者が安くなったと実感できる状況からは程遠かった。

 菅氏は制度整備後も値下げが鈍いことに不満を強め、自民党総裁選中に「携帯大手が世界でも高い料金」で、本業の稼ぐ力を示す「営業利益率」(売上高に占める営業利益の割合)が約20%に達しているとの批判を繰り返し、再び「料金は4割下げられる」と指摘した。

 総務省の家計調査によると、2人以上世帯の令和元年の携帯料金は約12万7千円と10年前より3割超増え、家計に占める割合も増加傾向だ。政府は料金が下がればその分を他の消費に回せることになり、景気回復に資するとみる。だが、一方で消費者目線では安さだけを求めるなら、通信品質は多少落ちるが料金の安い格安スマートフォンという選択肢もある。それでも、格安スマホのシェアが1割強にとどまるのは、日本の消費者が安さだけでなく、通信速度など品質を重視していることの証左といえる。

 菅氏は値下げが実現しない場合、「電波利用料の見直しをやらざるを得ない」とするが、利用料が上がると携帯大手のコスト増になって料金値下げをしづらくなるだけに「脅し」との見方が強い。だが、政策で新たな一手を打ち出す余地が限られる中、首相自ら圧力をかけて自発的な値下げを促す手法の効果は大きいとみられる。携帯大手幹部は「対応を検討せざるを得ないだろう」とつぶやいた。