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今までは“お粗末な結果”だったが… 「UI」へのこだわりは本気度の裏返しか

 【経済#word】「ユーザーインターフェース(UI)」

 菅義偉(すがよしひで)首相が、行政手続きでの押印の原則廃止を進めている。はんこは、署名の手間を省く便利な道具として普及した。押印をデジタル化できるかも、人々が使いやすさを感じられるかにかかっている。新型コロナウイルス対策の給付金支払いをめぐる混乱で露呈したのは、デジタル化の遅れだけではない。単にサービスをオンラインで提供するだけではなく、情報の表示の仕方や必要な情報を探す操作方法といった「ユーザーインターフェース(UI)」を重視した利用者目線が不可欠だ。

 「(求められているのは)まずUIを徹底的によくしろということだ」。平井卓也デジタル改革担当相は就任翌日の会見で、新設するデジタル庁の方針について聞かれ、こう強調した。

 UIとは、サービスを受ける際に、利用者が実際に目で見て、手で操作して、情報をやり取りする接点のことだ。パソコンでインターネットをする際には、画面に表示されるホームページや操作をするためのマウスやキーボードなども、UIのひとつといえる。

 スマートフォンが日常生活の必需品になり、毎日のように新たなアプリが誕生しては消えていくようになったが、アプリの人気を大きく左右するのもUIだ。操作と表示を兼ねる手のひらサイズの小さなタッチパネルに分かりやすさを突き詰められるか。IT各社は、利用者が簡単で便利だと感じるUIを磨き上げることに心血を注いでいる。

 お粗末オンライン

 「いまひとつイケてなかったので急いで改修を指示した」。平井氏は6日の会見で、政府のデジタル政策に関する意見を幅広い層から募集する「アイデアボックス」の公開について、スマホ版はUIを改善するため、9日公開のウェブ版より、1週間程度開始が遅れる見通しを明らかにした。開始を遅らせてまでUIにこだわる方針は、政府のデジタル化への本気度の裏返しともいえる。

 これまでのオンライン行政は、利用者目線を欠いたUIでお粗末な結果を繰り返してきた。5月から始まった10万円の特別定額給付金申請では、オンライン申請でトラブルが続出した。パソコンの申請では、マイナンバーカードの情報を読み取るカードリーダーが必要で、スマホでの手続きでも一部の機種に限られるなど、ハードルが高かったためだ。

 マイナンバーカードの暗証番号を覚えていないと、役場の窓口に出向く必要があり、コロナ禍で密集を避けるためのオンライン申請が、役場の大混雑の原因になるという皮肉な結果も招いた。総務省によると、給付済みの約6千万世帯のうち、オンライン申請は約200万件(5日現在)にとどまった。

 不満をチャンスに

 UIの改善には、利用者からの声を拾い上げ、問題点を正確に把握し、いち早く対応することが重要だ。あるニュースアプリでは、細かい修正を週1回以上繰り返しているという。

 クリックの回数を減らす▽どこに情報があるのかを一目瞭然にする▽分かりやすい言葉を使う-。作業は地道そのものだ。修正したアプリは一部の利用者に使ってもらいテストをし、利用状況の変化をデータ化。良い結果が出たものを採用するといった手法がとられることが多い。

 必ずしも大幅な改変が効果的ともかぎらない。ある格安旅行サービスでは、料金に「航空券代込み」と1行加えただけで、「安すぎて宿泊料だけで、航空券代は含まれていないのではないか」という利用者の不安が解消され、予約率が大きく伸びたという。

 スマホ決済の「ペイペイ」は9月、決済額を入力すると、画面が自動的に180度回転し、お店の店員が金額を確認しやすくなるUIの改善を実施した。入力した金額を相手に確認するためにスマホの向きを変えなければならないという不満が寄せられたからだ。ペイペイの担当者は「消費者と加盟店、さまざまな立場の利用者からの意見がアイデアのきっかけになる」と話す。アプリの提供側からの一方的な改善では優れたUIは生まれない。

 ペイペイなどは1つのアプリで、決済や金融、配車など、複数のサービスを提供する「スーパーアプリ」を目指している。多くのアプリで機能が拡充されていく中、UIの改善はIT各社にとって、ますます重要な位置づけとなっており、それを支援するさまざまな最先端技術も生まれている。カメラを使って利用者の視線を追跡し、画面のどこをどれくらいの時間見ていたか分析する「アイトラッキング」など、UIの優劣を可視化するサービスも出始めている。

 決済アプリ 企業にも恩恵

 アプリの利用実態分析を手掛けるフラーによると、利用するスマートフォンアプリの数はスマホの普及とともに増加している。同社の報告書「モバイルマーケット白書2019」は、スマホ決済など生活に密着したアプリが急拡大したことが大きな要因と指摘している。

 利用者は令和元年末時点で、1人平均約100個のアプリをダウンロードしている。だが、日常的に使い続けているアプリはその3割強にとどまっている。

 最も多くダウンロードされているのが検索エンジンや電卓などの便利機能系アプリで約20個だが、利用回数は限定的なものも多い。一方で、スマホ決済や金融機関のアプリのダウンロード数は平均2個程度と少ないが利用頻度は高く、企業側にとっては利用者のデータを多く収集できる。(高木克聡)