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「最低10市町村は手を挙げてほしい」 核ごみ調査に重い住民負担

 原子力発電で生じた高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場をめぐり、長年滞っていた候補地選定作業が動き出した。北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村が第1段階の文献調査受け入れを相次いで表明し、近く調査が始まる見通しだ。だが、最終処分への道筋はついておらず、現地の課題は山積する。「風評被害対策は」「賛否で分断される」。住民の負担は大きい。(寺田理恵)

北海道寿都町の寿都漁港(寺田理恵撮影)
最終処分場の選定調査に向けた今後の展開
核のごみの最終処分場のイメージ
取材に応じる北海道神恵内村の高橋昌幸村長(左)=2日、同村役場(寺田理恵撮影)
取材に応じる北海道寿都町の片岡春雄町長(左)。道内では大きな議論が起きた=9月14日、同町役場(寺田理恵撮影)
北海道寿都町の風力発電施設(寺田理恵撮影)

 道知事は反対

 「『北海道としてみられるので絶対に反対して』という電話が今日もかかってきた。風評被害を受けながら、やっていけるか」

 神恵内村で民宿を経営する女性(42)が懸念を漏らす。

 SNS(会員制交流サイト)では「金目当て」「恥知らず」などと村を非難する書き込みも。実家が村で漁業を営む20代の男子大学生は「言葉一つで人が死んだり店が潰れたりする時代だ」と不安を募らせる。

 文献調査では過去の記録から活断層の状況や鉱物資源の分布などを調べ、調査中に廃棄物が持ち込まれることはない。受け入れ自治体には2年間で最大20億円の交付金が支払われる。

 第2段階の調査へ進むには都道府県知事や首長の同意が必要だが、北海道の鈴木直道知事は反対を明言。神恵内村も寿都町も最終処分場の受け入れまでは言及していない。

 「金目当て」といわれる理由の一つは、文献調査だけで終わる可能性もあるためだ。しかし、調査を受け入れるだけでも住民の負担は大きい。

 寿都町で応募検討が表面化した8月、片岡春雄町長が「商品を買わないなど、脅迫じみたものが(水産加工業者に)くる」と訴えた。今月8日の受け入れ表明直前には、町長宅で放火未遂事件まで起きた。

 「議論を全国に広げたい」

 「核のごみ」とは、使用済み核燃料を再処理した後に生じる放射性廃液をガラス成分と混ぜて溶かし固めた「ガラス固化体」。万年単位で放射能が残るため、国は地下300メートルより深い岩盤中に埋める最終処分場を全国で1カ所造る計画だ。

 国と原子力発電環境整備機構(NUMO)が平成14年から、受け入れ市町村を公募している。高知県東洋町が19年に初めて応募したが、強い反対を受け、賛否をめぐる出直し町長選挙の結果、推進派の町長が敗れて撤回し、事実上頓挫した。

 国は27年、前面に立ち取り組む方針に転換したが、目立った動きはなかった。各地の原発などにたまり続ける使用済み核燃料は約1万9000トン。貯蔵容量の約8割に迫り、処分場をどこかに造る必要がある。

 片岡町長は「進まない核のごみの議論を全国に広げたい。最低でも10(市町村)は手を挙げてほしい。国からも都道府県に要請すべきだ」と国民的な議論に期待をかける。

 だが、北海道外で名乗りを上げる市町村は今のところなく、道内では漁協をはじめ、いくつもの団体が反対。議論は道内だけの問題のようになっているのが実情だ。

 「溝をつくらないで」

 寿都町と神恵内村は、それぞれ人口約2900人と約820人。日本海沿岸の断崖に貼りつくように小集落が点在する。

 寿都町はふるさと納税や風力発電で自主財源を確保するものの、町財政は厳しい。新型コロナウイルス感染拡大の影響が過疎化に追い打ちをかけ、交付金に期待する声が出ている。

 一方で「安全に処理できるのか」「賛否で分断される」などと反対も根強い中、片岡町長自ら応募を決断した。複数の町議によると、町議9人中4人が反対し、町議会の賛否は拮抗(きっこう)している。

 神恵内村でも、応募検討を求める村商工会の請願を採択した村議会の臨時本会議で、議長を除く7人の採決で2人が反対に回った。

 村は北海道電力泊(とまり)原発に昭和40年代の誘致活動から関わり、原発立地地域として交付金も受けてきた。国のエネルギー政策に理解を示す住民が少なくない上、人口減少に伴う将来不安から調査を容認する声が大勢だが、「(村商工会の請願から)1カ月で決めるのは難しい」などプロセスへの批判もある。

 片岡町長は表明を急いだ理由を「賛否がエスカレートすると溝になる」と説明する。神恵内村の高橋昌幸村長も「溝をつくらないようにお願いしたい」と住民に呼びかけており、2町村は今後も難しいかじ取りを迫られそうだ。