お茶やミネラルウォーターなどのペットボトル飲料のラベルをなくした「ラベルレス」商品が次々と登場し、売り上げを伸ばしている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出自粛やテレワーク(在宅勤務)が広がり、ペットボトル飲料を段ボールケースで箱買いする人が増加。プラスチックごみを削減できるだけでなく、分別時にラベルをはがす手間がかからないため人気を集めているようだ。商品の“顔”となるラベルはないが、ペットボトルの形状を工夫したり、お茶の味や色に磨きをかけたりと、飲料メーカー各社は不断の技術革新を重ね、しのぎを削っている。
「緑でないものまで緑に見えるほど」開発に没頭
伊藤園は今月16日から「お~いお茶 カフェインゼロ ラベルレス」をケース販売限定で発売する。同社は世界初の緑茶飲料「缶入り煎茶」やペットボトル入り緑茶、業界初のホット対応ペットボトル製品などを生み出してきた嚆矢(こうし)だが、ラベルレス飲料市場への参入は早くはなかった。ラベルをなくすことで中身のお茶にそのまま光が当たってしまうため、光による品質劣化の懸念があったという。
そこで「お~いお茶」ブランド初のラベルレス商品には、ペットボトルに工夫が施された。全体に細かいギザギザの溝を入れたのだ。同社の広報担当者は「ラベルレスのペットボトルは線を入れた形状になっており、光を乱反射させることで中身を守っています」と胸を張る。
ペットボトルのお茶に並々ならぬこだわりを見せるのは伊藤園だけではない。サントリー食品インターナショナルは今年4月、主力商品のペットボトル緑茶「伊右衛門」を大幅にリニューアル。開発に携わった商品開発部の上本倉平さん(34)は「鮮やかな緑とお茶の香り、味わいをどう両立するか。それが最大のポイントでした」と明かす。
渋みの主成分となるカテキンを茶葉から多く抽出すれば、お茶の味わいを出すことはできるものの、カテキンの抽出量を増やせば茶色味が強くなり、鮮やかな色合いは失われていく。一方を優先させると他方が損なわれる「トレードオフ」の関係にあった。開発陣は抽出温度や抽出時間を変えながら約300回も試作を繰り返すことになった。1年余りの開発期間を経て、カテキンの抽出量を抑えつつ、うまみ成分のテアニンを多く抽出することに成功。京都の老舗茶舗「福寿園」の茶匠、谷口良三氏が厳選した茶葉で「火入れ」と呼ばれる焙煎を行い、鮮やかな緑とお茶の香り、味わいを両立した新たな「伊右衛門」が生まれたという。
緑茶の色を消費者にダイレクトに伝えられるラベルレスの「伊右衛門」を4月と8月に数量限定で発売。このラベルレス商品はコンビニエンスストアで店頭販売されたため、原材料などを記載した首掛式の小さなラベルが取り付けられた。さらに、今月3日からは24本入りの「伊右衛門 ラベルレス」を発売。こちらは段ボールケースに原材料などを一括表示したため、ペットボトルの完全ラベルレスが実現した。
「緑でないものまで緑に見えてしまうことがあったほど開発にのめり込んだ」という上本さん。「ラベルレス商品の発売で鮮やかな緑色に生まれ変わった伊右衛門に気づいていただく機会も増え、頑張った甲斐があります」と話した。
ごみ分別時のストレス第2位に「ラベルはがし」
日本コカ・コーラが今年4月、全国の20~50代の男女400人を対象に実施した意識調査によると、コロナ禍の外出自粛前に比べ、ごみの分別のストレスが増えたかとの質問では、72.0%が「増えている」と回答。ごみの分別でストレスに感じることの2位は「ペットボトルのラベルはがし」(22.5%)だった。ペットボトルのラベルをはがすことにストレスを感じていた人は多かったようで、ごみの分別時にラベルをはがす手間がかからないラベルレス商品の需要が大きいことがうかがえる。
資源有効利用促進法の省令が一部改正されたことで、これまでペットボトルのラベルに記載していた原材料名などの表示を外装の段ボール箱に一括表示できるようになり、完全ラベルレス化が実現。100%リサイクルペットボトルを採用し、環境負荷の少ない「い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス」が今年4月に発売された。同社によると、エコのイメージのある「い・ろ・は・す」のブランド価値もあり、ネット通販向けのラベルレス商品は昨年から企画されていたが、今年は巣ごもり需要も追い風となり、新規の顧客開拓につながったようだ。
日本コカ・コーラの広報担当者は「今年の1~6月に『い・ろ・は・す 天然水 ラベルレス』が純増で売り上げに乗っかりました。ラベルレスに対する消費者のニーズが高いと確認できました」と語る。その後、ラベルレス商品は主力ブランドの「綾鷹」「爽健美茶」「カナダドライ ザ・タンサン・ストロング」にも拡大。売り上げを伸ばしているという。
大手メーカーで初めて2018年にラベルレス飲料を発売したアサヒ飲料は、これまでにお茶の「十六茶」や乳酸菌飲料「守る働く乳酸菌」など計6ブランドのラベルレス商品をインターネット通販で展開。アサヒグループホールディングスによると、今年1~10月のラベルレス商品の販売実績は約180万箱(前年比約2.1倍)で、すでに年間目標の150万箱を大きく上回るペースで好調に推移しているという。
今年4月には、リサイクルマークを直接ボトルに刻印した完全ラベルレスの「アサヒ おいしい水」天然水を発売した。原材料表示などは段ボール箱に記載しているため、ペットボトルに表示する必要はないが、「アレルギーをお持ちのお客さまや原材料が気になるお客さまのために」(同社)、アレルギー表示や原材料を記したタックシールを取り付けた商品もある。
同社広報部門の担当者は「ラベルをなくすことで廃棄物を減らせると考え、環境に配慮した商品だが、ラベルをはがせる手間を省けると好評をいただいている」と、環境に配慮したラベルレス飲料のさらなる需要拡大に期待を寄せていた。