菅首相、3次補正編成指示 デジタル化など経済構造転換
菅義偉首相が10日編成を指示した2020年度第3次補正予算案では、デジタル化や50年までの温室効果ガス排出量実質ゼロなど、新型コロナウイルス収束後を見据え、“菅カラー”の対策を講じる。財源規模は10兆円超が見込まれるが、「真水」と呼ばれる国の財政支出が30兆円規模で必要との声もある。不必要な肥大化を防ぐため、編成に当たり1、2次補正の効果の検証も必要となりそうだ。
首相が3次補正の編成を指示したのは、4~6月期を底に持ち直しつつあるとはいえ、依然回復が鈍い日本経済への危機感がある。
民間予測では、国内総生産(GDP)成長率は物価変動を除く実質で、20年度に前年度比6.1%減のマイナス成長を記録した後、21年度は3.4%増と半分強の戻りしか見込めない。先行き不安から設備投資の回復が遅く、デジタル化やグリーン化など経済構造転換を加速し、投資意欲を喚起する必要があると考えた。
政府は新型コロナ対策の1、2次補正を通じて、真水で計57.6兆円の大型予算を編成したが、国民に一律10万円を配る特別定額給付金の一部が貯蓄に回るなど、景気浮揚の効果は不十分だったとも指摘される。
経済財政諮問会議で民間議員が示した試算では、既存のコロナ対策のGDP押し上げ効果は20年度に35兆円分発生するものの、21年度は4兆円分にとどまる。今後はコロナ収束後を見据えて、民間需要を呼び戻す対策が不可欠だ。
自民党の世耕弘成参院幹事長は「10兆、15兆円どころか30兆円ぐらい規模があってもいい」と指摘する。
一方、国際通貨基金(IMF)が10月に発表した世界経済見通しでは今年の日本の成長率はマイナス5.3%と見込み、感染者数が世界最多の米国(マイナス4.3%)を下回る。多額の予算に見合う効果があったのか、脱危機対応を目指す今後は精査が必要になる。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「デジタル化やグリーン化に重点を置く方向性は正しい。長い目で構造改革につなげる予算とする必要がある」と指摘し、コロナ後を見据えた経済構造の転換に対応するという視点が欠かせないとの考えを示す。(永田岳彦)
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補正予算 当初予算の成立後、新たに必要になった財政支出に対応するため年度途中で組む予算。景気を下支えするための経済対策費や自然災害の復旧費が計上されるのが通例。財源には前年度予算の使い残しなどを充て、不足分は借金に当たる国債の追加発行で賄う。年末ごろに編成する補正予算は翌年1~3月ごろに執行期を迎えるため、4月から使い始める翌年度の12カ月分の当初予算と合わせた財政運営を「15カ月予算」と呼ぶことが多い。