真山仁の穿った眼

株価沸騰の怪しさ

真山仁

コロナ禍でもNY株3万ドル突破

 コロナ禍で閉塞感ばかりが、社会を覆っているにもかかわらず、株式相場だけは、活況を呈している。

ニューヨーク証券取引所(GettyImages)
終値が史上初3万ドルを超えたNY株と日経平均株価を示すボード=25日午前、東京都中央区(佐藤徳昭撮影)

 有効な治療薬もワクチンも登場せず、行動の自由をはじめとする様々な「自由」が制限を受け、“自粛”というルールで束縛され、経済活動もままならず、多くの人が暗澹(あんたん)たる想いを抱き、将来に対して不安を抱えている。

 しかも、緊急事態宣言が解除された夏以降、緩やかに経済活動が復活してきたと思った矢先、再びウイルスの感染者、さらには重篤患者数が急増。社会はまた、立ち往生する可能性が高まってきた。

 にもかかわらず、である。

 株価だけが高騰を続けている。

 投資の専門家ではない私にとって、この状況は理解できないというよりも、驚天動地に近い。

 アナリストらの分析では、トランプ政権が倒れバイデン政権となった影響に加え、新型コロナウイルスのワクチン完成が間近(だが、確証はない!)で、米国市場で期待が膨らんだお陰だとされる。

 「小さな政府=つまり、政治が経済活動を干渉しない」を標榜する共和党政権の方が、経済的にはプラス要因が大きいというのが通説のはずだ。実際、トランプは、経済的にはそれなりの成果も上げた。

 一方のバイデン新大統領の民主党政権は、社会保障制度などの充実に力を入れることを約束しており、経済活動を最優先にはしない傾向が強い。

 トランプ大統領という、想像を絶する品のない国家元首がいなくなったことは、世界的に歓迎すべきかも知れないが、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が史上最高値(執筆している11月25日現在では、史上初の3万ドルを突破したというニュースが入ってきた)を更新する理由が見当たらない。

巨大機関投資家の思惑は…

 それに、トランプが大統領を辞めることを歓迎している日本人が多いが、民主党政権は、従来から日本には厳しいことで知られている。

 また、連日、国内の新型コロナウイルスの新規感染者数が、過去最高記録を更新している。これだけマイナス要因が重なれば株価は下がるはずなのだ。にもかかわらず、反比例して株価ばかりが上がる異常性には、もっと警戒心を持った方が良くないだろうか。

 無論、コロナ禍だから、日銀がますます株を購入して下支えしているという背景はある。だが、その程度の高騰ではない。

 私のような天(あま)の邪鬼(じゃく)な人間には、「これは、コロナ禍でしぼんでしまって今年の利益を出せない国内外の機関投資家やヘッジファンドが、莫大なカネを投下し、無理矢理株価を引き上げ、利益を出そうとしているに違いない」と思えて仕方がない。

 それが事実なら、近い将来、巨大機関投資家は皆、利益出しを行うために、株を売却し、市場の底が抜けて、一転、大暴落する可能性があるのではないだろうか。

 株価とは、未来への期待値だという。

 しかし、今の日本のどこに、株価を爆発的に跳ね上げるだけの期待の要素があるのだろうか。

 好事魔多し、ということわざを引くまでもなく、こういう時は、用心、用心。

昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』など骨太の社会派小説を数多く発表している。

【真山仁の穿った眼】はこれまで小説を通じて社会への提言を続けてきた真山仁さんが軽快な筆致でつづるコラムです。毎回さまざまな問題に斬り込み、今を生き抜くヒントを紹介します。アーカイブはこちら