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“外貨”獲得狙い…地銀の生き残り戦略「地域商社」が売り出す地元ブランド

 地域に埋もれて知られていない産品を発掘し、生産者らに代わって域内・域外に拡販する「地域商社」を、地方銀行が設立する事例が増えている。地方都市は人口減少や高齢化で市場が縮小傾向にあり、地銀には、低金利の長期化で本業の貸し出しだけでは稼ぎにくくなっている事情もある。銀行が副業を本格化させる中、地域商社もその一つとして成否が注目されている。

「せとのわ」の会社設立を発表した関係者ら=11月、岡山市
「地域の魅力を域外に発信していきたい」と話す、「せとのわ」の小林靖典社長=岡山市

 瀬戸内海の魚を“発掘”

 「岡山で取れる瀬戸内海の魚は、種類は豊富だが、それぞれ数が少ない。まとまった数がないと売りにくく、廃棄されてしまうことが多いんです」。岡山の第1地銀の中国銀行などが今年11月に設立した地域商社「せとのわ」(岡山市北区)。吉田明弘管理部長が説明するのは現在手掛けている事例だ。県内の漁業関連会社の依頼を受け、いわゆる「未利用魚」を加工品として「利用魚」に変えるプロジェクトを進めている。

 「せとのわ」は、地域活性化を目指す中銀の経営計画の一環で、異業種の乗り合いで設立された。出資は1億円のうち、中国銀行が70%。残りの30%は地元紙の山陽新聞と地元デパートの天満屋が折半している。

 自社の生産品を売り出したい業者から手数料を受け取り、コンサルティングと販売拡大の手助けを行う。銀行が持つファイナンスの知見に加え、百貨店の流通網、新聞社の宣伝広告のノウハウなどそれぞれの専門性が強みとなる。事業者が個別にネット販売するよりも、大きなスケールでの拡販を目指す。

 吉田さんは「まず、あくまで売れるものでなくてはならない」と説明。目下、県内の業者から約30件の相談が寄せられているといい、内容を検討している最中だ。

 5カ年で100件計画

 地域商社の試みは他地域が先行している。国の「まち・ひと・しごと創生本部」によると、平成27年から昨年の5年間で、地銀が出資していないものも含め地域商社の設立は98件。地域振興につながるとして国も後押ししており、今年からの5カ年で100件設立という目標を掲げている。

 主な事例では、27年に北海道銀行などが「北海道総合商事」(札幌市)を設立。ロシアの極東地区向けに、現地の需要にあった北海道産の野菜を選び、輸出したりしている。29年には、山口銀行と山口県が「地域商社やまぐち」(山口県下関市)を立ち上げ、酒をはじめとする名産品を「やまぐち三ツ星セレクション」と題して拡販。地域をブランドとして売り出す試みだ。

 銀行は従来、一般事業会社に対して原則として5%までの出資しかできなかった。だが銀行法施行規則の改正で、昨年10月から、金融庁から事業認可を得た「銀行業高度化等会社」は100%出資で地域商社が設立できるようになった。改正は銀行の持つネットワークや情報の有効活用がねらいだ。

 この規制緩和後、山形銀行が昨年12月に全国で初めて全額出資の地域商社「TRYパートナーズ」(山形市)を設立。それぞれ四国4県にある阿波、百十四、伊予、四国の4行は今年4月、折半出資で「Shikokuブランド」(高松市)を立ち上げた。「せとのわ」もこの仕組みを活用したものだ。

 “外貨”獲得狙い

 地域商社の設立が相次ぐ背景には、地方の人口減少で市場が縮小することへの懸念がある。

 岡山県の場合、人口は平成17年の196万人をピークに減少が続き、令和2年10月では188万人。高齢化も進んでいる。その影響は地元紙や地元百貨店にも波及することが異業種出資にもつながっている。

 「せとのわ」の小林靖典社長は「主語はわれわれではなく、地域。まず、地元の企業に売り上げをあげてもらいたい。地域の魅力を発信し、域外の“外貨”を獲得し、地域を活性化させていきたい」と話している。