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安価な労働力と利用し続けた日本の「ゆがみ」 行き場ないベトナム人技能実習生

 技能実習生として来日したベトナム人が、劣悪な労働環境に耐えかねて実習先から失踪するケースが急増している。正規の仕事に就けず行き場をなくして犯罪に手を染めたり、新型コロナウイルスの影響で実習先が破産したり経営難で解雇される事例も起きている。国は実習生の転職を認める特例措置を設けるなど対応に乗り出しているが、安価な労働力として実習生を利用し続けてきた日本の「ゆがみ」も透ける。(飯嶋彩希)

NPO法人「アジアの若者を守る会」職員の女性に相談する失踪した元実習生ら=2020年10月、千葉県内(飯嶋彩希撮影)
支援者とともに役所の申請書類に記入するチャン・ヴァン・フンさん(左)=2020年10月(飯嶋彩希撮影)

 劣悪な環境

 「悪いことだと分かっていたが、家族を養うために働き続けるしかなかった」

 関東にある建設会社で約1年間実習生として就労した後、失踪したチャン・ヴァン・フンさん(37)は、こう打ち明けた。

 就労先は残業時間と比べて給料が安く、住み込み先の光熱費などを差し引かれ、想定していたよりも手取りは少なかった。「来日時に借金もしており、割に合わないと思って逃げた」

 約2年間に及んだ失踪期間中は、日本にあるベトナム人コミュニティーを頼って中国地方の建設会社を紹介してもらい、住み込みで働いていた。ただ、同僚のベトナム人実習生が不法在留の疑いで警察に逮捕されたのをきっかけに、自身も不法就労だと会社にばれ、解雇された。

 「いつも通り会社の送迎車に同僚と乗ったら、警察が来て目の前で同僚の一人が逮捕された。私の番もすぐ来る、と思うと恐ろしくなった」。昨年9月に入管当局へ出頭。現在は仮放免中で、母国へ送還されるのを待っている。

 平成30年に来日し、千葉県のクリーニング会社で技能実習生として働いていたベトナム人女性(37)も、日本人の上司から毎日のように「何でこんなことも分からないんだ」「ばか」などと怒鳴られるなどして追い詰められ、1年足らずで逃げ出した。

 貧しい農村部出身。母国には幼い子供や高齢の両親らがおり、手取りで月16万~20万円の報酬の大半を仕送りに宛てていた。逃亡後は友人の紹介で農家や工場で働いたが限界を感じ、チャンさんと同様、入管へ出頭。未払い賃金があったため、1年ぶりに就労していたクリーニング店を訪れたが「失踪者の対応はできない」と、一部しか支払われなかったという。

 新資格創設も…

 外国人技能実習制度は平成5年、日本で技能を学びながら働き、母国へ技術を持ち帰るという国際貢献を目的に創設された。しかし、実際には研修を名目とした「都合のいい労働力」として扱われてきた実態があり、劣悪な待遇や実習生の失踪が問題化している。

 法務省によると、2019年末時点で実習生は全国で約41万人と、5年前に比べて約2・5倍に増加。かつては中国人がトップだったが、28年以降はベトナム人が最も多くなっており、昨年末時点で約21万人に達する。これに伴い失踪者も増えており、昨年に実習先から姿を消した実習生8796人のうち、半数以上がベトナム人だった。

 外国人労働者をめぐっては2018年4月、単純労働分野に門戸を開く新資格「特定技能」の創設を柱とした改正入管法が施行。技能実習生からの移行を相当数見込んでいるが、昨年末時点で特定技能はわずか1621人にとどまる。

 加えて昨年は、コロナ禍により帰国したくてもできない実習生らが増加。入管によると、少なくとも2万人以上いるとされる。また、コロナの影響で業績不振に陥った実習先の会社から実習生が解雇されたり、実習先自体が倒産したりするケースも出ているほか、新たな実習生が来日できず、農業など人手不足に陥る業界も出ている。

 このため出入国残留管理庁は2020年4月、解雇された実習生に対し、人手不足の産業での就労を認める「転職」を可能とする特別措置を実施。9月以降には帰国ができない元実習生も他職種で就労できるよう支援を拡充した。

 だが、すでに失踪した元実習生らの闇は深い。9月には、北関東で家畜や果物の大量盗難事件が発生。逮捕されたベトナム人の元実習生らはSNSを介してつながり、盗品をベトナム人コミュニティーで売って生計を立てていたという。

 相談窓口なく

 「(実習生らが)誰かに相談しようにも、窓口が乏しすぎる」

 ベトナム人実習生や、失踪した元実習生らの相談を請け負っているNPO法人「アジアの若者を守る会」代表の沼田恵嗣さんは、こう語る。

 2020年に入り、100人以上の相談を受けた。未払い賃金の相談など、就労先でのトラブルで訪れる人は多いといい、必要に応じて労基署などの公的機関へ一緒に赴き、通訳や必要書類の記入などを手伝っている。

 「失踪して同胞のコミュニティーの中に潜ってしまえば、社会の目が届かなくなる。国の政策で連れてきたのだから最後まで面倒を見るべきだ」と強調した。