海外情勢

ジェトロ 2021年のBRICS経済を占う インド

 「自立」なるか 投資誘致へ社会変革

 2020年のインドを振り返るうえで欠かせないキーワード、それは「自立したインド」だ。

 5月12日、モディ首相は国民に向けた演説の中で、新型コロナウイルスによる危機を乗り切るためには「自立したインド」となることが唯一の道だと述べた。経済をさらに開放し、国内製造業を強化するとともにインドからの輸出を促進。輸入に頼らない産業の競争力を強化することでインドの「自立」を目指す構想だ。

 5月当時、インドは新型コロナ感染拡大の最中にあった。ロックダウン(都市封鎖)による経済活動の停止により4月の鉱工業指数は前年同月比マイナス57.3%まで落ち込み、自動車産業については統計すら取れない状況に。行き場を失った地方からの出稼ぎ労働者らが何百キロの距離を徒歩で帰郷しようとする様子が連日報道されるなど、国民の多くが先行きの見えない不安を抱えていた。

 そうした中、守りではなく、むしろこれを機にインドはさらに力強く、自立を成し遂げていくのだという攻めのビジョンを描いたモディ首相。首相のメッセージに呼応するかのように、段階的ロックダウン解除が始まった6月以降、投資誘致のための省庁横断的委員会の立ち上げや投資誘致オンラインセミナーの実施、国内製造に関わる生産連動型インセンティブスキームの発表など、自立したインドの実現に向けて積極的な動きがみられた。

 外資流入の動きも続いている。新型コロナを契機とした社会の変革に着目し、米グーグルやIBMなどのグローバル企業は大型投資を表明。感染も減少傾向が見られ始めた9月中旬頃からは、日系企業からも新たなビジネスの発表が相次いだ。各機関の国内総生産(GDP)成長率予測では、20年はマイナス7~10%台だが、21年はプラス成長を見込んでいることからも、インドの経済回復に期待が寄せられていることが分かる。

 一方で懸念も残る。20年6月の国境係争地帯での印中両軍の衝突に端を発する対中関係の悪化は、貿易・経済関係にも影響を及ぼした。タイヤやカラーテレビ、冷媒を使用したエアコンへの輸入規制や自由貿易協定(FTA)利用時の原産性審査厳格化など、保護貿易主義的な動きもみられる。

 19年に交渉のテーブルから遠ざかった「地域的な包括的経済連携(RCEP)」も結局、インドが復帰することなく同国を除く15カ国で署名された。他国との距離と、国内産業強化のバランスをどのように取りながらモディ首相がインドの「自立」を成し遂げていくのか、21年の動向にも注目が集まる。(ジェトロ・ニューデリー事務所 磯崎静香)