令和3年の関西経済はどうなるか 五輪と中国が浮上の呼び水に
いま大阪市内のマンション8階に住んでいるが、明け方ちかい深夜、近所にある串カツ店の客の喧(けん)騒(そう)で目が覚めることが、よくある。「歩道まで広がるテーブル席は『密』でない」と店は考えているかもしれないが、大声でしゃべりながら飲み食いしている客がマスクをしていないことは確実だ。
営業時間の短縮要請が出ているさなかでこのありさま。「店を閉めれば死活問題」という事情があるかもしれないが、「新型コロナウイルスの勢いが衰えないのも当たり前だ」と思わざるをえない。
そんな状況が続く中、令和3年の関西経済はどうなるのだろうか。
りそな総合研究所によると、3年度の関西2府4県の実質経済成長率は前年度比3・2%に達するとみられる。日本全体の3・0%を上回る水準だ。
2年度の成長率がコロナでマイナスに沈む反動もあるが、牽(けん)引(いん)するとみられるのは輸出だ。関西経済にとって有利なのは中国との関係が深いこと。対中輸出額は全体の約3割に達し国別でトップだ。中国経済の急回復が続けば輸出は伸び、企業の生産が改善する。
企業の設備投資も増えそうだ。りそな総研によると、3年度の設備投資は2・5%増と全国の1・8%増を上回る。デジタル技術で業務を改革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」への投資などが追い風になるとみられる。個人消費も2・8%増に達するが、全国の3・2%増は下回るという。
問題は、変異種も出てきたコロナに負けず、想定通りの成長シナリオを国内外で保てるかだ。中国経済が失速しなければ、関西企業は第5世代(5G)移動通信システム、電気自動車(EV)など、中国が重視する新しい産業の発展を取り込める。
夏の東京五輪・パラリンピックを成功させることも重要だ。選手や観客に万全の感染症対策をほどこせれば、「日本は安全」というメッセージを全世界に発信できる。観光資源に強みがある関西は、大勢のインバウンド(訪日外国人客)を引き戻せるだろう。
そして何より大切なのは、重症者が増える感染の状況を改善することだ。ワクチンや治療薬の普及とともに、「新しい生活様式」の徹底が求められる。
もっとも、冒頭の串カツ店に詰めかけた若い客は警戒心が明らかに低い。老若問わず、改めて気を引き締めることが肝要だ。(山口暢彦)