菅首相施政方針演説全文(1)

「ワクチン接種、2月下旬までに開始できるよう準備」

 内閣総理大臣に就任し、政権を担って4カ月、直面する困難に立ち向かい、この国を前に進めるために、全力で駆け抜けてまいりました。

 そうした中で、私が、一貫して追い求めてきたものは、国民の皆さんの「安心」そして「希望」です。

一 新型コロナウイルス対策

(国民の命と健康を守り抜く)

 国民の命と健康を守り抜く。まずは「安心」を取り戻すため、世界で猛威をふるい、わが国でも深刻な状況にある新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させます。

 目の前の患者を何とか救うため、力を尽くす医療従事者の皆さま、感染拡大の防止に奔走する保健所の皆さま、細心の注意を払い高齢者と向き合う介護関係者の皆さま。全ての関係者の方々に、厚く、お礼を申し上げます。

 また、国民の皆さまには、生活や仕事にご負担、ご苦労をおかけする中で、多大なご協力をいただきました。しかし今回、再び制約のある生活をお願いせざるを得ず、大変申し訳なく思います。

 今一度、国民の皆さまのご協力をいただきながら、私自身もこの闘いの最前線に立ち、都道府県知事はじめ自治体関係者とも連携しながら、難局を乗り越えていく決意です。

 今回、緊急事態宣言を発出しました。これまで1年近くの闘いの経験に基づき、効果的な対象に徹底的な対策を行っております。

 私自身、連日、状況を聞き、専門家とも議論を重ねておりますが、東京都で6割を占める感染経路不明の多くが、飲食と見られています。

 特に、30代以下の若者の感染者が増えています。多くの方は無症状や軽症ですが、若者の外出や飲食により、知らず知らずのうちに感染を広げている現実があります。

 飲食での感染を押さえ込むことが極めて重要であり、飲食店について、協力金を180万円まで引き上げ、20時までの営業時間の短縮を徹底します。

 それ以外にも、テレワークの7割実施、不要不急の外出・移動の自粛、特に、20時以降の不要不急の外出自粛、さらに、イベントの人数制限をあわせて実施します。

 こうした対策により、感染を押さえ込み、減少傾向に転じさせます。専門家が緊急事態宣言のレベルとする、いわゆる「ステージIV」を早急に脱却いたします。

 さらに、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、罰則や支援に関して規定し、飲食店の時間短縮の実効性を高めます。議論を急ぎ、早期に国会に提出いたします。

 その上で、感染対策の決め手となるワクチンについては、安全性・有効性の審査を行った上で、自治体と連携して万全な接種体制を確保し、できる限り、2月下旬までには接種を開始できるよう準備いたします。私も、率先して接種します。

 大事なのは、必要な方に必要な医療をしっかりと提供していくことです。あらゆる方策を尽くし、医療体制の確保を強力に進めていきます。

 先月には、新型コロナ対応を行っている医療機関に派遣される医師や看護師への支援額を倍増いたしました。新たに新型コロナ患者用の病床を確保するため、1床当たり最大で1950万円を助成します。年明け以降、東京都では、1000を超える病床の確保について、最終的な調整を行っています。現場の負担となっている清掃業務などの委託経費を支援いたします。保健所の負担を減らすため、応援派遣を1200名から3000名に増員します。

 知事の要請があれば、自衛隊の医療チームなどをいつでも投入できるように、万全の体制を整えています。

(暮らしと雇用を守る)

 何としても事業を継続していただき、暮らしと雇用を守っていく。それが、政治の責務です。

 所得が低いひとり親世帯に追加で5万円、さらに2人目以降の子供について、3万円ずつの支給を、昨年中に行いました。手元資金にお困りの方々への緊急小口資金は、昨年以来、5000億円が利用されており、返済を免除する特例も、3月末まで延長いたします。

 雇用調整助成金について、これまで対象とされていなかったパートや非常勤の方々に、日額1万5000円を支給する特例を来月末まで延長します。緊急事態宣言に伴い、大企業にも特例を拡大します。

 官民の金融機関による、無利子・無担保融資に十分な資金を用意し、さらに、4000万円の限度額を6000万円に引き上げ、手続きも簡素化いたします。返済にお困りの方には、公庫などがさらに一定期間の返済猶予を行うなど、柔軟に対応し、民間金融機関に対しても同様の対応を要請いたします。

 前年と比べ、自殺者が5カ月連続で増加し、とりわけ女性が顕著な傾向にある事態を重く受け止め、SNSを通じた相談窓口などにより、不安に寄り添う体制を強化します。

 過去最多となった児童虐待について、児童相談所の児童福祉司を5000名体制に強化し、学校、警察、弁護士と連携して、早期発見につなげます。

 困窮する学生の修学を支援し、新卒扱いの柔軟化を要請します。就職氷河期世代の就職も引き続きサポートしてまいります。

二 東日本大震災からの復興、災害対策

(東日本大震災からの復興)

 3月11日で、あの東日本大震災から10年となります。改めて、犠牲となられた多くの方々のご冥福をお祈りし、被災された全ての方々に、心からお見舞い申し上げます。

 心のケアなどのきめ細やかな取組を継続するとともに、原発事故で大きな被害を受けた福島においては、「創造的復興の中核拠点」となる国際教育研究拠点を設立します。原災地域12市町村に魅力ある働く場をつくり、移住の推進を支援します。

 福島の本格的な復興・再生、そして東北復興の総仕上げに、全力を尽くしてまいります。

(災害対策・国土強靱(きょうじん)化)

 震災の経験も教訓とし、さらに、ここ数年の相次ぐ水害やこの冬の大雪、災害の激甚化の中で、災害発生時には、万全な対応を速やかに行います。防災・減災、国土強靱化についてもしっかりと進めます。5年集中で、事業規模15兆円を目途に対策を実施します。

 大雨予測の精緻化、遊水地や貯留施設の整備、ダムの事前放流、土地利用の見直しなど、ハードとソフトの対策により住民の命を守ります。

(暮らしの安全・安心)

 暮らしの安全・安心を確保します。ストーカー規制法を改正し、違反行為をGPSによる位置情報の取得にも広げます。銃刀法を改正し、クロスボウの所持を禁止し、許可制とします。

 ネット通販トラブルの増加を踏まえ、デジタルプラットフォーム企業に対し、違法商品、危険商品の出品停止を求めます。SNSの誹謗(ひぼう)中傷について、発信者情報の開示命令などの裁判手続を整備し、被害者の迅速な救済につなげます。