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国産ワクチン年内供給困難に 塩野義製薬、大規模治験難しく

 塩野義製薬が開発を進める新型コロナウイルスワクチンの年内供給が、困難な見通しであることが16日、分かった。先行するワクチンの実用化が進み、偽薬を用いた数万人規模の最終段階の治験(臨床試験)を年内に実施することが難しい状況となっているため。同社では、ワクチンの安定供給と、日本特有の変異株出現に備えるため、安全性を担保した上で使用を認める緊急使用許可の仕組みの必要性を訴えている。

 塩野義が開発を進める新型コロナウイルス予防ワクチンは現在、治験の第1、2段階にあたる第1/2相試験を国内で実施している。同時に、最終段階の治験となる、偽薬を用いた、世界の流行地域の数万人を対象にした治験に向けて準備を進めており、その予算は数百億円規模を見込む。

 ところが、世界では米ファイザー製や英アストラゼネカ製など実用化したワクチンの接種が広まっていることから、未承認のワクチンの治験参加者の確保が難しくなり、年内に大規模な治験を実施できる国が少なくなっている。

 塩野義はこれまで、開発と同時に国内工場を拡充し、年間3千万人分を供給できる生産体制の構築に取り組んでいた。同社は引き続き、大規模治験に向けて模索するが、米国では、コロナ禍の非常事態を考慮した緊急使用許可の仕組みで米ファイザー製などのワクチンが実用化されたことなどから、国内でも同様の枠組みの必要性を訴えている。

 国産ワクチンで現在、人に接種する治験に入っているのは、第2/3相試験中の創薬ベンチャーの「アンジェス」と、第1/2相試験中の塩野義で、第一三共とKMバイオロジクスが今月中に治験に入る予定となっている。(【3月4日、自民がPT初会合】「日の丸ワクチン」課題多く、危機感に提言相次ぐ

米食品医薬品局(FDA)が、パンデミック(世界的大流行)などの緊急事態で、ワクチンを含む医薬品を使用しやすくするために、承認されていない医療製品の使用を緊急に許可する仕組み。臨床試験は緊急使用が許可された後も継続され、結果をFDAに報告する必要がある。