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処理水海洋放出、風評被害なら東電賠償 対策へ週内にも閣僚会議

 政府は東京電力福島第1原発の処理水について海洋放出の方針を正式決定し、最大限の対策を講じても風評被害が生じた場合には東電が賠償に対応することを求めた。風評被害対策などを検討する新たな関係閣僚会議は週内にも始動する。一方、風評影響は現時点では想定が難しい面がある。賠償額がかさめば東電の経営に逆風となりそうだ。

 風評影響の抑制に向け、科学的根拠に基づく情報の分かりやすい発信で国内外の理解を促すほか、水産物の販路拡大といった生産や加工、流通、消費の各段階で徹底した対策を講じる。

 加藤勝信官房長官は13日午前の記者会見で「今週中にも私が議長となる新設の関係閣僚会議を開催し、対策の進め方について議論をする予定だ」と述べた。

 一方、東電の小早川智明社長は同日の関係閣僚会議終了後、記者団に「まずは風評影響を発生させないように最大限努力する。それでもなお損害が発生するようであれば、適切に賠償していきたい」と語った。

 東電は被災者への賠償や廃炉などで必要となる約22兆円のうち約16兆円を自社で確保しなければならず、毎年5000億円規模を捻出する必要がある。ただ、現行の経営再建計画は平成29年に策定されたもので、約22兆円には処理水の処分で風評被害が生じた場合の賠償は加味していないという。

 東電は、火力発電の燃料費抑制につながる柏崎刈羽原発(新潟県)の早期再稼働を目指してきたが、テロなどを防ぐ核物質防護の不備や所員のIDカード不正使用が判明し、原子力規制委員会は近く事実上の運転禁止命令を出す方針。経営再建の切り札である同原発の再稼働は遠のいている。

 政府の基本方針は、処理水の海洋放出に伴う将来の風評影響に関し、「現時点では想定しえない不測の影響が生じうることも考えられる」と言及した。賠償額が膨らめば、東電の経営に痛手となる可能性もある。