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九経連新会長に西鉄の倉富氏 麻生路線を踏襲 2代連続で非九電系 

 九州経済連合会は10日、麻生泰会長(74)=麻生セメント会長=の後任に、西日本鉄道の倉富純男会長(67)が就任する人事を内定した。九経連会長は、先代の松尾新吾・現名誉会長(82)=九州電力特別顧問=まで九電会長経験者が就いていたが、2代続けて九電出身者でない会長となる。6月7日の総会で正式決定する。(中村雅和)

 アジアとのリンク

 「『煮詰まる日本』ではなく『伸び行くアジア』とのリンクが重要だ。海外展開に実績を挙げられている西鉄の倉富会長のリーダーシップに期待している」

 福岡市博多区で記者会見した麻生氏は、後任に倉富氏を選んだ理由について、こう述べた。

 麻生氏は平成25年の就任以来、九経連に新風をもたらした。内部的にはKPI(重要業績評価指標)を設定し、各部門に具体的な数値目標を明示させ、達成度の評価を進めた。対外的には、農林水産物の海外輸出を進めるための専門商社・九州農水産物直販を設立。観光分野でも中国や韓国をはじめとするアジア圏一辺倒から脱するため、欧米豪からの誘客を目指した自転車レースを企画した。さらに、政府の国際金融拠点形成構想に呼応し、福岡市の高島宗一郎市長らと産官学挙げた誘致組織を早々に発足させるなど4期8年で多くの種をまいた。

 自身が汗をかく

 倉富新会長はこうした麻生氏の後を継ぐ。打診は昨秋の西鉄社長在任時だった。

 「西鉄はアリのように地上をはいつくばる目線で国内外のネットワークを築いてきた。大局を見られた麻生会長の目線としっかり融合させる。(麻生氏が掲げた)『九州から日本を動かす』というビジョンを踏襲し、全身全霊、元気いっぱいやっていく」と語った。

 北部九州を事業基盤とする西鉄が全九州の財界のかじ取り役となることについては「マクロの視点では、アジアの中の九州という意識を持っている。南部九州の会員企業にも私自身が汗をかき、具体的な活動、行動を示すことで理解が得られるのではないかと思っている」と述べた。

 倉富氏は4月、九州経営者協会会長に就いたばかり。九経連会長との兼務について「役割はちょっと違うが、会長兼務による効率化などもある」とした。

 「応分の負担」

 九州財界の陣容は今春、入れ替わりが相次ぐ。

 福岡経済同友会では、貫正義相談役の代表幹事退任が決まり、福岡商工会議所でも、九電出身の藤永憲一・九電工特別顧問が会頭を退く方向で調整が進む。今回の九経連会長人事で、経済3団体に九電系トップが不在となることが確実となった。財界だけでなく、地元企業などの連合で運営権を得た福岡国際空港も、受け皿会社のトップは西鉄出身の永竿哲哉氏だ。非九電系でポストを占めることになり、九電内部からは「正直言って違和感はある」と本音が漏れる。

 財界活動で、九州最大の企業である九電の存在感は大きい。九経連への資金拠出額は最大で、職員派遣数も最多だ。初めての非九電系会長となった麻生体制でも、東日本大震災後の原発長期停止に伴う九電の経営悪化から、松尾氏が麻生氏に会長就任を依頼した経緯もあり、手厚い支援体制を敷いていた。

 また、九電は29年には、九経連事務方トップの専務理事に、当時の常務執行役員を送り出した。この人事にはポスト麻生を見込み、九電への“大政奉還”をスムーズに進めるためとの観測もあった。このため会見では、麻生氏は九電を「九州の確固たる大黒柱」と持ち上げ、倉富氏も「地元を代表するリーダー会社」と呼応した上で「九電と一緒に動かないと九州を変えることはできない」と強調した。また、西鉄として九経連活動に「応分の負担をする」との考えを示した。

 倉富体制で新たに臨む課題の1つはIR(統合型リゾート施設)誘致だろう。国内他都市との競争で、地元自治体や経済界をまとめ上げ、地域指定を勝ち取れるかに手腕が試される。

 麻生氏も会長は退任するが、名誉会長として引き続き九経連に残る。今後の活動について、麻生氏はこう力を込めた。

 「バックアップするだけなく、磨きあげ、仕上げたい仕事がある」