主張

電力需給の逼迫 安定電源の確保が急務だ

 今年度の夏と冬に電力需給の逼迫(ひっぱく)が見込まれるとして、経済産業省が電力不足対策をまとめた。利用者には無理のない省エネを求め、電力会社には火力発電所の補修繰り延べなどを要請する。

 とくに冬には東京電力管内で深刻な電力不足が予想されており、休止中の火力発電所の再稼働も求める方針である。暮らしや産業を支える電力の安定供給に全力を尽くしてほしい。

 そのためには安全性を確認した原発の早期再稼働を含め、安定電源の確保が急務である。

 電力不足は、競争を促す電力自由化と、太陽光など再生可能エネルギーの大量導入が大きく影響している。ともに政府が進めてきた政策だが、安定供給を損なうような制度については、見直しも躊躇(ちゅうちょ)してはならない。

 電力供給にどれだけ余裕があるかを示す供給予備率は、今年8月のピーク時に北海道などを除いて3.8%となる見通しだ。これは最低限必要な3%をわずかに上回るにすぎない。来年1~2月の予備率はさらに厳しく、東電管内ではマイナスが見込まれる。

 経産省が発電所の補修延期などを求めるのは、電力危機の懸念が例年以上に強まっているからにほかならない。利用者に対しては法律に基づく節電を要請しない方針というが、需給に応じて節電も機動的に求める必要があろう。

 深刻な電力不足が見込まれるのは火力発電所の休廃止が続いているためだ。再生エネ急増で火力発電所の稼働率が低下した。電力自由化で競争が激化している電力会社は採算の低い発電所を休廃止している。脱炭素に伴い旧式の石炭火力も廃止を迫られている。

 経産省の対策は、こうした電力の構造問題の抜本的な解決につながるものではなく、当面の需給調整にすぎない。今年1月には関西圏で深刻な電力不足が発生したばかりだ。国民を守るためにも電力の安定供給は不可欠である。綱渡りの需給調整で危機を回避しようとする現状は早期に打開しなければならない。

 基幹電源として活用できる原発の再稼働は当然である。電力会社が安定的に発電所を建設できるよう政策的に後押しする仕組みも欠かせず、発電所建設に向けた収入保証などを検討すべきだ。電力自由化で参入した新電力にも一定の協力を求める必要がある。