国内

首相の解散戦略暗雲 「選挙の顔」に不安

 政府が8日に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて東京都に4回目の緊急事態宣言発令を決めたことで、菅義偉首相の衆院解散戦略にますます暗雲が立ち込めた。

 政府が緊急事態宣言や蔓延(まんえん)防止等重点措置の方針を説明した8日の衆参両院の議院運営委員会では、与野党が西村康稔経済再生担当相に厳しい意見をぶつけた。自民党の福田達夫氏は「人の心、社会が疲れている。3回目(の宣言)で限界を迎えた」と危機感を示し、立憲民主党の青柳陽一郎氏は「コロナの押さえ込みに失敗した。政策の失敗だ」と追及した。

 衆院議員の任期が10月21日に迫る中、こうした逆風が首相の衆院解散の判断に影響を与える可能性がある。

 首相は、新型コロナの感染防止やワクチン接種を優先させた上で、9月30日に満了を迎える自らの自民党総裁任期の間に衆院解散に踏み切る考えを繰り返し表明している。

 「切り札」と位置付けるワクチン接種を広め、追加経済対策の骨格を決めたうえで、東京五輪・パラリンピックを成功させた余勢を駆って衆院選に臨むのが基本戦略だ。党を勝利に導けば、首相は無投票での総裁再選が視野に入る。

 首相が9月5日のパラリンピック閉会式の直後に衆院解散を表明し、衆院選投開票日は10月3、10、17日のいずれかという日程もささやかれている。

 ただ、与党内には「選挙の顔」としての首相に対する不安感がある。自民は4月の衆参3選挙や県知事選で敗北続きなうえ、今月4日投開票の東京都議選でも、自公で過半数を達成できず「大敗」との受け止めが広がった。ワクチン接種も「目詰まりしている」との批判があり、自民は政務調査会を中心に丁寧な説明をしていく方針だ。一方で、11月の衆院選実施や、総裁選前倒し論が浮上する可能性も捨てきれない。(沢田大典)