「いい加減にして」 飲食業界は悲鳴、埼玉で重点措置拡大
新型コロナウイルスの感染状況悪化を受け、埼玉県は20日、蔓延(まんえん)防止等重点措置の対象地域を見直し、さいたま、川口の2市から、川越、所沢、朝霞、志木、和光、富士見の各市などを加えた計20市町に拡大した。人の動きが活発になる4連休などを見据え、徹底的な感染の封じ込めを狙う構えだが、営業時間短縮の要請を受けた飲食店の関係者は出口の見えない苦境に悲鳴を上げる。
「体力も気力も削られていく…」
和光市で居酒屋「あかね堂」を経営する荒井努さん(55)は20日、同市が重点措置の対象に加わったことにため息をついた。
県は、対象地域にある飲食店に対し、午後8時までの営業時間短縮を要請するとともに、酒類提供に関しても「1人か同居家族」「午後7時まで」に限るよう求めている。要請に応じた飲食店への協力金(1店舗当たり日額)は、中小事業者の場合は売上高の過去の実績に応じて3万~10万円、大企業は売上高の減少額によって最高20万円と定めている。
午後8時までの営業では商売にならないと訴える飲食店関係者は少なくない。
所沢市のイタリアンダイニングで店長を務める男性(27)は「電話で営業時間を確認され『午後8時まで』と答えると予約につながらない」。酒類提供の条件に関しても「1人の客なんてそうそう来ない…」とこぼした。
埼玉県内では6月21日以降、重点措置に基づく午後8時までの営業時間短縮要請は、さいたま、川口両市に限られていた。しかし、感染者数の急激な増加を受け、県は7月16日の新型コロナウイルス対策本部会議で20市町への拡大を決めた。
感染状況に左右され頻繁に対応が変わることへの不満を口にするのは、川越市の居酒屋「ありがたや」店長の男性(57)だ。
「“切り貼り”で要請をやったりやらなかったり…。飲食業は地道に常連さんを守っていかないことには成り立たない。いい加減にしてくれ、というのが業界の本音だ」
朝霞市の居酒屋「魚とや北朝霞店」店長の阿部稔さん(52)も「何回同じことをするのか。飲食店は振り回されっぱなしだ」。所沢市のバル「CONA所沢店」店長の石渡秀男さん(36)は「重点措置の効果はあまりなくなってきているように感じる」と冷ややかに語った。
逆風が続く中、飲食業以外の仕事に活路を見いだす経営者もいる。
志木市の居酒屋「しょぼい居酒屋murameshi」店主の村田宗一郎さん(38)は「やれることを探そうと、昼間にハウスクリーニングの事業を始めた。これまで居酒屋一本だったが、店舗拡大などもできる状況ではない」と話した。(兼松康、深津響)