1月17日、同じ重慶市地元紙の『華西都市報』は重慶市共産党委員会のもうひとつの「業績」を伝えた。同委員会はこの数年、市の幹部や普通の会社員や学校生徒を含めた「延べ8000万人」の市民を動員し10万回以上の「赤い歌を歌う合唱会」を開き、毛沢東時代の「赤い歌」を集団で歌う活動を行ったという。
どうやら重慶市の共産党委員会は、幹部から子供まで全市民を巻き込んで「毛沢東に戻ろう」とする政治運動を展開している様子だが、その立役者は、「毛沢東好きの野心家」として全国的に知られている、重慶市共産党委員会書記の薄煕来氏である。
彼が旗手となって展開している「毛沢東に戻ろう」とする政治運動の背景にはトウ小平以来の市場経済路線がもたらした貧富の格差の拡大などの社会的ゆがみに対する民衆の不満と反感があろう。それを利用して中国の政治・経済・外交路線をふたたび「毛沢東的なもの」に戻そうとする動きは実に憂慮すべきものだ。
毛沢東時代と比べると軍事力が飛躍的に増大した今の中国が「世界人口の半分が死んでも構わない」という毛沢東流の狂気を取り戻そうとしたら、それこそ、日本を含めた周辺国にとっての「民族滅亡」の脅威となるのではないか。
【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
労働市場の厳しい現実
食欲そそるのか?
【石平のChina Watch】