現金の定期的な実査を行うことと、金庫に保管する現金の上限額を設けるだけでも、不正防止の効果があります。さっそく、現地部署に指示してみてはいかがでしょうか。
◆作業くずも売れる
中国で日本人が想像しにくい不正の中に、原材料や製品の横流しや作業くずの売却があります。特に作業くずの売却は、日本人はあんなもの売れないと思っているかもしれません。しかし、原則的に中国ではなんでも売れると思っていた方がいいでしょう。
作業くずでもある程度の量になれば、数千元というお金になることもあります。工場労働者の給与が月額3000元(約4万円)以下の中国人にとって、作業くずの売却代金が大きな金額であることは言うまでもありません。
日本でも戦後の貧しいときに廃材などを集めて小遣いを稼いだことのある年配の駐在員は理解できるでしょう。ある会社では、鉄くずが出る工場の入り口に体重計を置いて、出勤時と退勤時の体重を守衛がチェックするようにしています。
中国で最も多い不正は、業者からのバックマージンです。これは金額も大きく、確たる証拠をつかむことが難しい問題です。納入業者は、バックマージンを渡していたことが見つかると取引停止になることを恐れて証言しないためです。