兜町では金融記者として、87年のニューヨーク市場に端を発した大暴落も、89年末の時価総額590兆円からつるべ落としに下落する相場も、山一証券の倒産もみた。
アベノミクスはいったいこれから、どのような幸せをもたらすのか。わたしたちは、なにを取り戻すのだろうか。
「家族」の主人公、周吉は、旅の途中で妻を亡くし、遺骨を抱えて島の実家に戻る。その葬儀を終えて、最後まで残ってくれた次男の恋人にこういう。
「これから厳しい時代になると思いますが、息子と一緒にがんばって暮らしていってください。ありがとう」と。
批評家が多いであろう会場に、すすり泣きの気配が満ちた。経済理論を超えた地平にみえる時代の気分に安倍首相が目をこらすとき、アベノミクスに血が通う、と思いたい。(シンクタンク代表 田部康喜)