【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(9) (1/2ページ)

2013.11.15 05:00

 ■加速する電化と情報化

 前回はマンダレーの南、チャウセー郡ティンダウン村落区ティンダウンジー村のモータリゼーション(動力化)の話であったが、今回はエレクトリフィケーション(電化)とインフォーマティゼーション(情報化)の話をしよう。

 1987年に私が初めてこの村に住んだとき、村には電気が来ていなかった。村人はロウソクか灯油で明かりを取っていた。町まで行って自動車用のバッテリーに充電して村人に貸し出す、バッテリー充電屋という商売があったが、これで蛍光灯をつけている世帯は、ごく少数だった。電化製品といえば、英BBCのミャンマー語放送を聞くための乾電池ラジオくらいだった。

 89年に再び村を訪ねてみると、パゴダ(仏塔)にだけ電気が来ていて、仏像の後光を表す照明に利用されていた。そして、そこから村の有力者が自分の家に電線を引いていた。道路と同様に、電気もパゴダを優先するというのが、いかにもミャンマーらしい。

 94年になると、村全体に電気が来始めていたが、電気メーターを付けている家は156世帯中18世帯に過ぎなかった。新たな電化製品としては、テレビを所有する世帯が5、ビデオが1、冷蔵庫が2という状況だった。

 ◆利益もたらす道具

 ビデオを所有するフラタウン氏の家では、庭にビデオ館を建てて、有料で村人に見せて副収入を得ていた。冷蔵庫を所有するテインハン氏は、これでアイスキャンディーを作って、学校帰りの児童たちに売っていた。このころの電化製品は耐久消費財ではなく、利益をもたらす資本財、つまり商売道具だったのだ。

 現在でもすべての世帯に電気メーターが付いているわけではないが、メーター所有世帯が隣接した親族の家に「違法に」電線をつないで、電気を分けることによって、村のほとんど全ての世帯が電気を享受できるようになった。

 電気が来たからといって必ずしも電化が進むわけではないが、村にはテレビ、ビデオ、冷蔵庫、炊飯器、調理器などが急速に浸透している。これにも安価な中国製品が貢献している。特にテレビとビデオはセットで1万円程度からあり、貧困な労働者世帯でも持つようになっている。

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