タイはエビの輸出回復が遅れている。同国のエビ養殖は感染症の蔓延(まんえん)がいまだに収まらず、生産減少が続いており、輸出回復は来年後半になるとの見方を業界団体のタイ冷凍食品協会が示した。現地紙バンコク・ポストなどが報じた。
同国では2012年後半から「早期死亡症候群」(EMS)と呼ばれる感染症がエビの養殖場で発生。それ以前の同国のエビの生産量は年間50万~60万トンだったが、病害の拡大を受け、昨年は前年比42%減の27万トンとなり、輸出量は34%減の18万7000トンと大きく落ち込んだ。
同協会によると、状況は深刻化している。今年の生産量は昨年を下回る20万トンとなり、輸出量も昨年と比べて25%減少する見込みという。
同国水産局は、生産の回復に向け、外国から稚エビを輸入するなどの取り組みを進めており、同協会のポット会長は、稚エビがうまく育てば、来年後半から徐々に輸出回復が見込めるとしている。
同国の養殖エビ生産については、感染症だけでなく、米国や欧州からの奴隷労働に対する非難などの輸出阻害要因がある。
さらにタイは来年1月以降、欧州の一般特恵関税制度(途上国向けの関税減免)の適用対象から除外される見通しだ。それに伴い、欧州向けの加工エビの関税は現行の7%から12~20%となり、輸出競争力の低下が懸念される。
今年1~8月の冷凍エビの輸出量は、前年同期比32%減の8万9462トンだった。輸出先は、米国が同24%減の3万5000トン、日本が38%減の2万3670トン、欧州が40%減の1万1034トンなどとなっている。(シンガポール支局)