【高論卓説】国際プロジェクト成功に不可欠な資質 戎崎俊一 (1/2ページ)

2015.5.19 05:00

 最近、科学プロジェクトの多くが大型化して一国では賄うのが不可能になってきた。その結果、複数の国が協力し合って計画を推進する国際プロジェクトが増えている。その多くが、費用の50%近くを出す「主幹国」が存在しない「真の国際プロジェクト」となっている。

 こうしたプロジェクトの運営は複雑だ。半年に1回程度回り持ちで、コラボレーション会議を行い、そこで主要な成果を報告し、重要な案件を協議して決定するようにしている。コラボレーションの代表者は、主要な指導者で組織する運営会議でお互い話し合って選び、彼(または彼女)を補佐するさまざまな役割を分担する。当然、何かにつけて意見が分かれる。いくつかある技術的オプションの中でどれを、いつ、どのような手順で選択し、決定するかなど議論をすればきりがない。

 指導者同士で激論が続くこともある。その議論の中で、今までわからなかった問題点が次第に明確になり、その解決策を見つけて実効性を確認する過程が進行し、議論が収束してゆく。一方、両者が意地になって感情的な水掛け論が続き、議論がかみ合わなくなって、コラボレーションの運営に支障をきたす場合も少なくない。

 多くの日本人科学者が、このような国際プロジェクトに参加している。私が知っているのは天文と宇宙物理関係のほんの一握りの例であるが、地味ながら重要な部分を任されてコラボレーション全体から頼りにされている例が多いように見受けられる。少々、不思議に思い、自分の経験にも照らして考えた結果、多くの日本人科学者が、国際プロジェクトの成功になくてはならない資質を備えているのかもしれないと考えるようになった。それは、自分の名誉や利益よりも、プロジェクトへの忠誠心が高いことである。

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