モンユワの「牛団地」で春雨工場から出た「廃液」を乳牛に与える酪農家の夫人=2016年3月(筆者撮影)【拡大】
■春雨工場の近傍に酪農家あり
古都マンダレーから西に直線距離で100キロ、幹線道路で130キロほど西にモンユワ(Monywa)という町がある。チンドウィン川流域の農林産物の集積地として古くから栄えてきた。2008年1月にこの町の南にある村の社会経済調査をして以来、8年ぶりに同地を訪問した。その間、モンユワ周辺には工場地区、養鶏地区、養豚地区などが次々と設けられ、遠方のヤンゴン管区域やエーヤーワディ管区域からも入植者が来ている。今年3月、こうした新産業地区を尋ねてみた。
◆栄養価高い排出物
モンユワ周辺のここ10年の年間平均降水量は774ミリで、東京の半分程度である。そのためコメを作る水田は少なく、畑作地帯が広がっている。畑で作られる主な作物は、ワージーと呼ばれる短繊維のワタやヤシ糖の原料となるパルミラヤシの他、ヒヨコマメ、ライマメ、リョクトウ、レンズマメ、ササゲ、そして近年急増してきたキマメなどの豆類である。この豊富な豆類の生産を背景に、モンユワでは古くから多くの春雨工場が操業してきた。
コメから作るビーフンもマメから作る春雨も、ミャンマーではどちらもチャーザンと呼ばれ、蕎麦(そば)やラーメンのように、どんぶりで汁と一緒に食べられている。マメから作る春雨の場合、まず数種類のマメを決められた割合によって混合して水に浸し、これを挽(ひ)いてから一晩発酵させる。翌朝、これを機械と手で捏(こ)ね、細い穴に通して麺状にして乾燥させれば、春雨ができあがる。ところが、この発酵過程で強い臭いが発生する。そのため街中の春雨工場は次第に郊外へと追いやられ、モンユワでは「チャーザン・ゾーン(春雨地区)」と呼ばれる工場団地が形成されてきた。